♯8 ギボギブアップ伝説

―有名がゆえに生まれた汚名―




オカルト好きな方なら、宜保愛子(ぎぼあいこ 1932年1月5日 - 2003年5月6日)という有名な霊能者がいた事をご存知の方は多いと思う。
1970年代中頃から1980年代にかけて、お昼のテレビ番組『あなたの知らない世界』(日本テレビ)で放送作家であり日本心霊科学協会理事でもあった新倉イワオ氏(故人)と共に出演、心霊体験の再現映像を交えそれらの解説などをして霊能力者として一躍注目を浴びることとなった。
以後、数多くのメディアへの出演、著書の出版を精力的にこなすようになっていた。
オウム真理教によるテロ事件の発生以来、世論の批判を受けメディアはオカルト系の話題を自粛するようになり、自ずと彼女のメディアへの出演も減っていったようである。2003年5月に胃がんのため71歳で世を去った。
『とんねるずのみなさんのおかげです』では、石橋貴明が「宜保タカ子」のネタにするほどその知名度は高かった。

全盛期の彼女は各メディアの心霊系番組への出演も多く、日本各地のみならず海外の心霊スポットと呼ばれる場所にも何度となく訪れては霊視を行っていた。また、彼女の能力を頼り除霊の相談や依頼も跡を絶たなかったという。
そのため何度となく恐ろしい目にも遭っているようだ。
テレビ番組の収録などで心霊スポットを訪れた彼女が、私の手におえるところじゃないといったニュアンスの言葉を口にしたという話から、立ち入ることを拒んだ、恐怖のあまり逃げ出したというエピソードが巷間には溢れている。

私が知っている範囲でそれらのエピソードの舞台といわれる場所を列挙するとざっと 20件 25件(2017/03/16 - 2018/03/13) 34件(2018/12/25) 35件(2021/17/16) 37件(2021/08/03) 39件(2021/10/26) 40件(2021/10/26) 46件(2024/02/19)ほどが出てきた。

・ 青い屋根の家 北海道岩見沢市 2018/12/25 追記
・ 富美の家 北海道紋別郡
・ 雄別炭鉱病院 北海道釧路市
・ 幽霊マンション(円形マンション) 北海道千歳市
・ 塩釜トンネル 北海道様似郡 2024/02/19 追記
・ 松園の幽霊屋敷 岩手県盛岡市
・ 山伏屋敷(恩徳の幽霊屋敷) 岩手県遠野市
・ 蛇 屋 敷 秋田県大仙市(旧 大曲市) 2018/12/25 追記
・ 新庄市某所の心霊スポット 山形県新庄市 (詳細不明)
・ 滝 不 動 山形県上山市
・ 翁島ペンション(幽霊ペンション) 福島県耶麻郡 2021/10/26 追記
・ 横向ロッジ 福島県耶麻郡 2018/12/25 追記
・ ケンちゃんハウス 栃木県宇都宮市 2021/08/03 追記
・ 雄蛇ヶ池 千葉県東金市 2024/02/19 追記
・ 八王子城址 東京都八王子市 2021/08/03 追記
・ 首切り場(燈明堂処刑場跡) 神奈川県横須賀市 2018/12/25 追記
・ 寺前のお化け屋敷 神奈川県横浜市
(兵庫県神崎郡とも)
2017/03/16 追記
・ S川村の某温泉旅館 新潟県岩船郡 2018/12/25 追記
・ 佐 渡 島 新潟県佐渡市 2018/12/25 追記
・ 坪野鉱泉 富山県魚津市
・ 旧国道沿いの廃墟 福井県武生市 2018/12/25 追記
・ ウルトラマンハウス 山梨県笛吹市 2021/07/16 追記
・ 乙事トンネル 長野県諏訪郡 2021/07/16 追記
・ ホテル セリーヌ 長野県上水内郡 2018/03/13 追記
・ 伊勢賀美隧道(旧伊勢神トンネル) 愛知県豊田市 2024/02/19 追記
・ 三角屋敷 愛知県あま市
・ 知多半島 愛知県 2018/01/11 追記
・ 東山隧道(旧東山トンネル、花山洞) 京都府京都市
・ 廃ホテル(ホテルロンドン?) 兵庫県姫路市 2017/04/10 追記
・ 松 ○ 家 兵庫県 K町 2017/04/10 追記
・ 静 山 荘 鳥取県鳥取市 2018/12/25 追記
・ 石見畳ヶ浦、賽の河原 島根県浜田市
・ かもめ荘 鳥取県出雲市 2024/02/19 追記
・ 河南病院 愛媛県今治市
・ 大 谷 池 愛媛県伊予市
・ 旧 犬鳴トンネル 福岡県宮若市・ 同 糟屋郡 2021/10/26 追記
・ 旧 臼津トンネル 大分県津臼杵市・津久見市 2021/10/27 追記
・ 徳 之 島 鹿児島県大島郡
・ 喜 界 島 鹿児島県大島郡
・ 佐藤さん家 沖縄県名護市
・ 殺人事件のあった別荘 (日本) (詳細不明)
・ 廃トンネル (日本) (詳細不明)
・ 洋風の廃墟 (日本) (詳細不明 / 鎌倉の幽霊屋敷?)2021/10/26 補記
・ 民雄鬼屋(劉家古宅) 台湾 嘉義県
・ サジャハット島(Pulau Sejahat) シンガポール 2024/02/19 追記
・ 幽霊屋敷 ヨーロッパ(詳細不明) 2018/12/25 追記

更には、話の続きとでも言うのだろうか、彼女の死と結び付けて、その死に至った原因はある心霊スポットを訪れた時に徐霊に失敗、そこで悪霊に憑かれた、或いはその呪いにより亡くなったのだという話まで出来る始末である。(実際の(直接の)死因は胃ガンといわれる)
その死の原因となったと言われる場所でさえ複数ある…
・ 男鹿プリンスホテル( 秋田県男鹿市)
・ 新庄市某所の心霊スポット(山形県新庄市 / 詳細不明)
・ 大谷池( 愛媛県伊予市)
・ 高知県のある神社(高知県 / 詳細不明)
・ 亡くなる一ヶ月前に行った心霊スポット(詳細不明)
・ 亡くなる三日ほど前に行ったある地方の山にある心霊スポット(詳細不明)
それとは逆に、真偽のほどは定かではないが、彼女自身が亡くなる数年前に「私もそろそろ死ぬだろうけど、運命だからしかたない」といった旨のことを話していたという話もある。

これらの中には徐霊を依頼され仕事として現地に赴いた案件もあるかも知れないので全ての物に映像が残っているとは言えないが、私の知る限り上記20数件については、調べてみたが信用に値する情報も映像も何も確認できなかった。
それについては、たとえばテレビ番組の場合、彼女が恐怖のあまり霊視(立ち入ること)を拒否したため、結果番組として成立せず放送されることはなかったということらしい…

ただ、上記の場所ではないが過去一度だけ心霊スポットから宜保愛子が悲鳴を上げながら飛び出して行った映像を見た事がある。
香港(台湾だったかも知れない)の幽霊屋敷(廃墟)を彼女が訪れた時のこと、ある部屋の中に足を踏み入れた途端、部屋の中にいた鳥が彼女やスタッフに驚いて暗闇の中から一斉に飛び立った。それに驚いた彼女は悲鳴を上げながら部屋を飛び出していった。
彼女曰く、鳥が霊(人間)の顔をしていたと言っていた。
事実は本人にしか分からないことなので、霊能力も無ければその場に居合せたわけでもない私が憶測でものを言うのは憚られるが、私としては彼女は暗闇から飛び出して来た鳥に“物理的に”驚いたのではなかったのではないかと思っている。

彼女は本当に霊の存在を感じたり見たりすることが出来たのだろうか。
もしそれらを感じたり見たりすることができたのなら、霊能者であるはずの彼女が噂にあるように何度となく(不適切な表現だが)敵前逃亡をしたのだろうか…
彼女には本当に霊の姿が見えたからこそそこに近づく事を恐れ、そこを離れたのだという人もいるが本当の事は誰にもわからない。

それにしても、希代の霊能力者とまで称された彼女にだけ何故このようなエピソードが付いて回るのか。
これらはあくまで都市伝説であり、宜保愛子というネームバリューを利用して心霊スポットに箔を付けるための行為に他ならないと私は考える。
“あの有名な霊能力者宜保愛子でさえ恐怖して近寄れなかった”と言えば、変な表現かもしれないが、簡単に言えばそのスポットの価値を上げる(=箔を付ける)ための作り話だったのではないだろうか。
霊能者宜保愛子、悪く言えば有名故にその名前を利用されたのではないかと私は思う。

余聞。(2024/02/20 追記)

真偽(或いは番組上の演出等を含む)のほどは不明として、霊能者が霊視あるいは近寄ることを拒否した、逃げ出したという話は冝保愛子に限らずよくある話のようである。

詳細不明のものが大半だが、ここに上記に書いた以外の例を幾つか挙げておく。

・ 大阪城公園(大阪府大阪市) : 心霊番組の取材で訪れた霊能者が逃げ出したという話がある。徳川家康に滅ぼされた豊臣家の怨念に纏わる話など奇怪な噂には事欠かない場所である。
・ 堀金の井戸(山形県東置賜郡) : 東京?のテレビ局が霊能者を連れて「堀金の井戸」を訪れたが、霊能者が臆して番組にならなかたっという。
(逆に霊能者がビビる様子が撮れた(それほど怖ろしい)のなら、テレビ番組としてはそれはそれで番組としては成功だと思うが…)
・ 宿町の幽霊屋敷(長崎県長崎市) : テレビの心霊番組の取材で“有名”な霊能力者がここを訪れたが、手に負えないという事で取材が中止となった。
・ 奥米隧道(千葉県君津市) : AbemaTVの「ぜにいたち」(2023年1月9日放送分)で、霊媒師で、冝保愛子の弟子を“自称する”クレオパトラ美月が幽霊と遭遇し取材途中で早々に逃げ帰っている。

・ 放生池(大分県大分市) : テレビの心霊番組の取材で霊能者がここを訪れたが、タタリで気が触れてしまいロケが中止となってしまった。2024/03/14 追記
・ 石巻の海岸(宮城県石巻市) : 人道的援助と慰霊・鎮魂のために台湾から風水師が東北の被災地に訪れた時、石巻の海岸を訪れたが余りの霊の数に手に負えないと早々に退散したちう話がある。(真偽不明)2024/03/14 追記

これらは、前述したようにひとつには“霊能者も逃げ出すほどの心霊スポット”ということで、プレミアム感(箔)を付けるための常套句として使われている感があり、もうひとつには、穿った見方かも知れないが、“私(霊能者)には本当にこんなに恐ろしものが見えているんです」アピールに過ぎないと懐疑的な私は思ってしまうのである。


2018/12/25 加筆再編集。

2024/02/20 余聞を追記。






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