♯10 “心霊スポット”をカテゴライズする

―心霊スポットが出来る理由―




真偽の程は別として、これまでにいくつかの「心霊スポット」と呼ばれる場所を訪れた。
予てよりそれら(心霊スポット)はどのような曰く因縁、否、正確にはどのような経緯があって生まれたのだろうかとたまに考えることがあった。
突き詰めて考えた訳では無いが、心霊スポットが生まれる土壌(要因)には大きく分けて以下のようなものがあるのではないかと私なりに考えた。
ここでは幽霊の類、怪奇現象の存在の有無はあまり考えずに話を進めている。


【1】事実がベースとなっている例

(1-1)人が死んだ場所
事件、事故、自殺等で人が亡くなった場所や、古くは古戦場や処刑場など。それらは、望まずして命を落とした人たちの無念の思いが残っている、成仏できない魂が彷徨っていると考えられていることから、心霊スポットとされやすいと思われる。
ただ、これらの事件、事故等に起因すると言われる心霊スポットの中にも真偽不明の(事実確認の出来ない)場所が多数あることは留意しておかないといけないと思われる。

(1-2)忌み地、穢れ地
主に過去に何かしら忌まわしい出来事が起こった場所で、足を踏み入れたり、住んだり、開墾や伐採を行うとタタリや不幸があると言われる場所。


【2】物理的に危険な場所
実際には幽霊、妖怪の類は出ないが、危険な場所(ため池、廃屋等)なので子供が近寄らない様に、親や大人が「○○にはお化け(幽霊)が出るよ」「○○にはお化け(幽霊)が出るから近寄っちゃダメだよ」といった感じで戒めとして言い出したものが、「○○にはお化け(幽霊)が出る」という部分が独り歩きして心霊スポットになったという例もいくつかはあると思われる。


【3】古くからの信仰等に基づくもの
古来より、川などで隔てられた二つの土地を結ぶ「橋」、山などで隔てられた二つの土地を結ぶ「トンネル」などは、あの世とこの世の境目を結ぶ場所と考えられている。
四ツ辻(辻、十字路)もまたあの世とこの世の境目、あの世への入り口と考えられており、幽霊や妖怪が現れる場所とも言われていた。中国地方、九州地方などでは辻神という災いをもたらす悪神(魔物)が棲み付いていると伝えられている。
四ツ辻に関しては、「四」の字が「死」に通じるため忌避されたとも言われる。今の様に至る所に街灯がある訳でもなく、様々な環境が整備もされていない時代では四ツ辻に辻斬りや盗賊が隠れていることもあり、物理的にも忌むべき場所であったためともいわれる。


【4】流言、噂、虚構 等

(4-1)デマ
説明するまでも無く標記の通りである。
故意か意図せずかは時と場合によるだろうが、「芦屋ユネスコ会館」に代表されるように事実無根の話が伝播、人から人に伝わるうちに話に尾鰭が付き、いつしか心霊スポットと呼ばれるようになった事例もある。
例:芦屋ユネスコ会館(兵庫県)、喝破道場(香川県)

(4-2)人除け
不良、暴走族等が溜り場とするするため、人が近寄らないように噂を捏造することもなくはない。
しかし、逆に心霊スポットとして知名度が上がれば、肝試し等で訪れる人間が増える可能性もある。
例:「ゴッホの館」の掲示板の引用記事(兵庫県)

(4-3)私怨、イタズラ
近年、インターネットの発達に伴い心霊スポットでも何でもない個人の家や店舗を恰も心霊スポットであるかのような説明を付けて心霊系サイトの掲示板などに投稿する事例も多々見受けられる。


【5】事実誤認

(5-1)見間違い、勘違い
諺に「幽霊の正体見たり枯れ尾花」というものがある。
説明するまでも無いが、恐怖心や疑いの気持ちがあると、何でもないものまで恐ろしいものに見えることのたとえをいう。また、恐ろしいと思っていたものも、正体を知ると何でもなくなるということのたとえとしても用いられる。
目の錯覚、小動物や鳥、生きている人間などを幽霊や怪奇現象と誤認した人が、幽霊を見た、心霊現象に遭ったと言い出したことでそこが心霊スポットと呼ばれるようになることもあると思われる。
例:「幽霊の正体見たり…」に登場する神社(兵庫県)

(5-2)情報の誤解
心霊スポットという性質上、所在や名称が明確にされていない場所もある。
記載されている情報から類推し、いつしかそれが本来の場所と違った場所に存在するという前提で話が進んでしまうパターンもある。
実際にはA市にある心霊スポットだが、記載されていた情報が似ていたことから誰言うとなく(本来在るはずのない)B市にあるという話が出来上がったような例もある。
例:加西の一家惨殺の家(兵庫県)、朝霧公園(兵庫県)


【6】心理的影響

(6-1)心理的影響
実際にそこに幽霊が出たり、怪奇現象が起こるのか否かも定かでも無ければ、原因も定かではないが、人によってはそこを訪れる(通る)と何となく気持ちが悪い、悪寒がする、悪心を催すなど訴える場所がある。怖い、気味が悪いといった心理的なものが体調に影響を及ぼしている場合もあれば、下記【7】と重複するが、気圧や磁場等の物理的なものが影響を及ぼしている場合もあるかも知れない。
これらの場所も心霊スポットという扱いを受ける事がある。

(6-2)雰囲気
上記と重複する部分も多いが、とりわけ墓地、トンネル、病院、廃墟(廃病院、廃工場、廃校、廃屋、廃神社、廃寺など)、火葬場、慰霊碑や塚(首塚、墓所等)、自殺の名所、夜の海や池など、視覚、感覚的に気持ちが悪い、怖いと感じる場所。霊の存在の有無を別としても、これらの場所のいくつかは「何かが居そう(出そう)」的な先入観を持ってしまう場合がある。その心理的なものが生み出した心霊スポットもいくつかあると思われる。


【7】物理的影響
日本テレビ「特命リサーチ200X」 2002.5.26 放送「心霊現象の謎を探れ!」では、「磁気の乱れ」が影響して人間に幻覚(幽霊)を見せるのではないかという考察を展開していた。
幽霊の目撃や怪奇現象でも知られる六甲山を例にとり、岩石(花崗岩)が圧力を受ける事で電気が発生する圧電効果により発生した電気により磁界が発生、地磁気の乱れが人間の脳に影響を及ぼし幻覚を見せたのではないかとの見解を示した。
また、墓地で心霊現象に遭遇することも、墓石の素材である花崗岩が内包する磁鉄鉱の磁界の向きの均一化や花崗岩内部の圧力の影響等で強力な磁界を帯び、人間の脳に影響を及ぼし幻覚を見せたのではないかとの見解を示した。
更に、自殺の名所と言われるような大きな橋、とりわけそれらの中でも鉄橋は落雷等で磁力を帯びることがあり(落雷磁化現象)、同様に磁力が人間の脳に何らかの影響を及ぼし幻覚を見せているのではないかと言う見解を示している。


【8】禁足地の一部
神社仏閣の境内の一部、墳墓、祭祀場等の神聖な区域で、足を踏み入れてはいけないとされる禁足地の一部も、心霊スポットと呼ばれる事もある。
例:八幡の藪知らず(千葉県)






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