声はすれども

ご投稿 : F 様

2010-08-13


(平成22年)8月6日に体験した話しです。
友人がオオクワ(オオクワガタ)を採りたいと言いました。
ちょっとくそ生意気なことを言ったので、それじゃぁと、北摂のYという所に行きました。
ここは歩く距離が長く(登りばかり)また私自身よく道(道自体無い場所ですが)を間違えて、難儀するところです。

夕方遅く、車で山奥深く入り、歩き出した頃は日も暮れて真っ暗。
友人はどうもこのような状況下は初めてのようでした。
私「ここで何かあっても、誰もこない」
私「民家からかなり離れている」
多少怖がっている友人をもっと怖がらせようと思いました。
そして、明らかにヘトヘトな友人を尻目に、休憩もとらず先へと歩きました。
「待って下さいよぉ」と泣きそうな声がしました。

私「しまった!先行者がいる」
何処からか人の話し声が聞こえました。
尾根を歩いていた私は足を止め、声がどこからしているか、聞き耳をたてました。
どうも女性の声が交じっているようです。
友人「誰かいるみたいですね」
友人の話しに耳を貸さず、周りを注視しました。
前方と左側は杉林。
誰もいないし、第一、この杉林を通ってオオクワ採集には来ないはず。
右手の笹藪にはクヌギが沢山あり、声の主はここにいるはずです。
しかし…、いないのです。
ライトの光がありません。
激藪でもライトの光は多少は見えるのです。
友人「さっきからどうしたんですか… ずっと黙って…」
友人は一目で怖がっているのが分かりました。
私「ふふふ… 俺に生意気言った罰じゃ。もっと怖がれ。」
私は「こんな所、行くんですか…」と言う友人を無視して、黙って笹藪の中に入りました。

声は相変わらずしますが、私はクワガタがいるか、クヌギを確認しながら進みます。
友人は人の声が近くにあることに安心したようです。
友人「あの人らもオオクワ採集ですか?」
私は木に登って、洞(木のウロ)を覗きながら「あの人らって誰?」
友人「誰って… 声がするじゃないですか!」
私「あ~声ねぇ… ここにいるのは俺ら2人だけよ。」
友人「え… どう言うこと? ねぁ、どう言うことですか?…」
私「そう言うことだね。ま、夜だしね。その辺りウロウロしてるんじゃない。」
友人「…」 友人はほぼ完全に怖がっていました。

クヌギを全て確認し、藪を抜けると、目の前には広い伐採後地が広がっていました。
私「声はこの伐採後地からするなぁ。」
友人「でも… 誰もいませんよ…」
私「それが何か?」
ヘトヘトになり、また完全に怖がっている友人を見て「この俺に生意気言うからじゃ。ザマァ見ろ。」
しかし内心「まずいなぁ。」と不安を感じていました。
幽霊よりも、友人のパニックが怖かったのです。
「じゃ行こうか。」と、伐採後地に行きました。
友人「行くんですか…? だって…」
私「ここ通って行く方が楽なの。嫌ならお前は今来たルート行けば…」
私「大丈夫や。もし幽霊が出ても一瞬びっくりするだけ。何もしてこないよ。」
私「怖いんだったら、歌でも歌え。」
友人は完全に怖がって、黙って私の後ろを付いて歩いていました。






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