城東トンネル


投稿者 : Black Velvet

令和2年(2020)7月某日。世間では新型コロナウイルスの蔓延による自粛が呼びかけられる一方で、「Go to トラベル」キャンペーンが推進されるという全く持ってブレーキを踏みながらアクセルを踏むような混沌とした状態が続いている。

所用で篠山方面に赴いた帰り、日没を気にしつつ城東トンネル(兵庫県丹波篠山市後川中)へと足を延ばす。
日々の生業(なりわい)に追われ、心霊スポット探訪を主目的とした外出もなかなか思うに任せず、ここ数年はもっぱら所用で出かけた時に半ば無理矢理時間を割いて近くのスポットに立ち寄るという感じになっていた。

篠山市街から車で15分ほどだろうか。ここ城東トンネルには女性の幽霊が出るという噂がある。
西側坑門手前にある駐車スペースに車を停め、写真を撮るため徒歩で坑門へと近付く。
車に気を付けながら、坑門手前の少し広くなった所でスマホを構え写真を撮ろうとするのだが、画面越しに見るトンネルは白い靄(モヤ)がかかった様になりピントが定まらない。丁度、鏡やガラスに息を吐きかけると白く曇る様な感じになるのだ。
レンズが汚れているのかと思いレンズを拭き再び写真を撮ろうとするが相変わらず画面越しに見るトンネルは白い靄がかかったようになり、(スマホの)画面をタッチしてもピントが定まらない。スマホを降ろして、肉眼で見た感じでは靄や霧らしきものは見えない。
確かに、坑門やその周囲の法面には苔が生えていて湿度が高いであろうことは感じられるが、スマホのレンズが拭いた直後に(レンズが)一瞬で真っ白になるほど湿度があるとは思えないし、これまでにこの様なことは経験した事が無かった。
何度となくレンズを拭いたり、場所を少し変えたり、カメラを再起動させてみたりするが何度やっても状態は一向に変わらない。画面越しに見る城東トンネルは白く曇りピントが定まらない。
17時を過ぎていたとはいえ、まだ周囲も明るく、不思議だとは思ったが特に怖いという感覚は無かった。
正直な話、寧ろ意地になってきていた…
何度も撮り直しを試みるが白くぼんやりと曇ったっまでピントが定まらない。何度となくそんな事を繰り替えし、ようやく比較的クリアな写真が撮れたのは10数枚目だった。

写真を撮られることを拒んでいたのだろうか。

考え過ぎかも知れないのだが。
冷静になって考えるとひとつ気になることがあった。
十分に安全を確保して(車道から離れた空き地から)写真を撮っていたのだが、写真がうまく取れない(白く曇ってピントが定まらない)ので、何度か位置を移動している内に知らず知らずに車道のかなり中央寄りに立っていた。
車(運転手)から見れば丁度トンネルを出た所に私が立っていることになる。更に、薄暗いトンネルの中から明るい外に出た時、目が明るさに慣れず眩しさで視界が悪くなっている。
もし写真を撮るのに夢中になって車に気付かなかったら…
帰宅後、冷静にそんな事を考えて背筋が寒くなった…






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