藍那幽霊道
―第1回踏査―

太陽と緑の道
藍那小学校のそばに、藍那古道(「太陽と緑の道」)と呼ばれるハイキングコースがある。 この道は、一部では「藍那幽霊道」と呼ばれている道で、様々な怪現象が起こるという噂がある。
その山道の傍らで一家七人が心中したという話をはじめ、(携帯の機種にもよるのだろうが)携帯電話が“圏外”であるにもかかわらず、見ず知らずの空メールが届いたり、車で走行しているとひとりでに車の窓が開いたり、突然エンジンが止まったりするのだという。また、ラップ音などもよく聞かれるということだった。

夏のある暑い日、私はこの幽霊道と呼ばれる道を訪れた。
この界隈には土地勘があったので容易に着くことが出来た。しかし、この道は、古くから藍那と丹生山麓の坂本を結ぶ古道(現在は主にハイキングコース)であり、途中の建設資材置き場のような所までのわずか数キロ程度しか車では進めない。後は雑木林の中へと続く細い山道である。
この数キロ程度の道で車に乗っていて怪現象に遭遇したというのか?些か疑問が残る。

行ける所まで車で入ってみたが、ほんの数キロで車が入れないような山道に変わる。車をUターンさせ、取敢えず小学校の傍に車を停め、歩いて奥へと進んでゆく。
途中、ハイキングを楽しんでおられる初老のご夫婦とすれ違った以外は、全く人の気配は無い。山道は昼尚薄暗く、道のすぐ横を小川が流れているせいか、夏でもひんやりとした空気が漂っている。
この道の奥には、小屋と墓石があり、そこが先に触れた一家心中の現場だということだった。
取敢えず、その墓石とやらを確認しようと山道を進むのだが、進めども進めども何も無い・・・
ただ、しきりに山の中からザクザクという土を耕すような音が聞こえたり、かすかに風に乗り人の話し声らしきものが聞こえたりしてくる。それも、どう考えても農作業や山菜取りの出来るといった雰囲気ではない崖の上のような所から聞こえてくるのである。おそらく動物だとは思うのだが、どうしても人のような気配がしてならず、ある程度で諦めて引き返すこととした。

来た道を引き返し、車の所まで戻ってきた。
そこで、車のキーを取ろうとポケットに手をかけようとした瞬間のこと。
「ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン」
勝手に車のドアロックが開いたり閉まったりを繰り返した。
流石にこれには少々ゾッとした。

幸いにして何事も無く家に帰り着いたのだが、あの時のことは今も思い出すと少し寒気がする。



本ページはフレーム構成となっております。
左端にメニューが表示されていない場合はこちらからどうぞ。