ボロボロマンション

墓 地
兵庫県の I 町にボロボロマンションと呼ばれる建物があった。
今から20年程前(昭和57年(1982)頃)ここでガス爆発(火災ともいう)があり、多くの住人が亡くなった。その惨事の現場は長い間解体されることなく無残な姿を晒し続けているという。
(ここが廃墟になった理由は、住民が首吊り自殺をしたことから誰も住まなくなたっという話もある。)
廃墟の斜め前に広がる墓地の中の数基は、この事故で亡くなった人達の墓だとも言われている。

事故以来、ここでは全身焼け爛れた人の幽霊を見たといった類の話が多く聞かれるようになった。
また、この墓地の道を挟んだ向かいには商店があったのだが、夜な夜な幽霊が現れるために閉店してしまったという。
当時の様子を知る人によるとマンションと呼ばれてはいるがモルタル2階建てのアパートの様な建物であったといい、その荒れ様はかなりのもので、見るからに幽霊が出ても不思議ではないといった雰囲気を醸し出していたという。

様々な情報を元に現地を訪れた。
大体の見当をつけて周辺を探すと事故で亡くなった人が葬られているという墓地を見つけた。そこは二つの墓地が隣接しているらしく、広い墓域には古い墓石から最近のものと思われる墓石が林立している。
場所によっては今も土葬のようで、私が訪れた時も真新しい土盛りの上に墓石が建てられていた。また、5日ほどして再びその墓地を訪れた時には、先ほどの土盛りの横にまた新たに土盛りと墓石が作られていた。その土盛りは概ね棺ほどの大きさがあり、土葬である事はまず間違いないと思う。
一通り周辺を散策する。事前に教えてもらっていた幾つかの目印となるものは見付ける事が出来たのだが、肝心のそれらしい建物(ボロボロマンション)が一向に見当たらない。
途方に暮れていると携帯が鳴った。この建物について色々と教えてくれた人物からだった。
私がここを訪れている事を知っていたので、(ボロボロマンションの)近所に住む友人にこの建物について色々と聞いてくれていたのだった。その話によると、既に建物は解体されて無くなっているという事を知らされた。なるほど、いくら探しても見つからないはずである。

更にこの電話で思わぬ新事実が判明した。
その話を纏めると以下の様なものである。
今から20年程前、その建物で火事があったのは事実らしいが死者が出たという事実はなかったらしい。
火災による建物の損傷が激しく再び使用する事もままならず、解体するにも多額の費用がかかることから20年近くそのままになっていたということだった。
その後、数年前にこの土地の持主が廃墟となった建物を取り壊し整地、その跡地に数軒の住宅を建設しそのうちの一軒に今現在住まわれているという事だった。
火災の原因がガス爆発によるものだったのか否かは定かではないが、幸い死者が出たという事実は無かった。そうなると、お墓の話もあくまで噂という事のようだ。また、土地の持ち主がそこに家を新しく建てて住まわれている事を考えても、死者は無かったものと思われる。

では幽霊の目撃談は錯覚だったのだろうか?という事になるが、残念ながら私には否定も肯定も出来無い。
もし幽霊という物が本当に存在するのならば、彷徨える霊たちは或いはこのような廃墟に集まるものなのかも知れない。






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