今から15~16年ほど昔(1982~1983)、兵庫県のTという町に住んでいた友人と遊んでいた時のことだった。
近所を散策していると新興住宅街に似つかわしくない寂しい所にふと出くわした。それは宅地予定地のような一段高くなった石垣が組まれた空き地で、その石垣には真っ赤なスプレーで大きく平仮名で「がき」と書かれ、横には同じぐらいの大きさで鳥居が書かれていた。 落書きにしては一種異様な雰囲気がある。 それを見た瞬間、友人の顔はみるみるこわばり、足早にそこから離れようとしていた。 友人のあまりの怯え様に不思議に思った私は、友人にどうしたのかと訪ねてみるが何も話そうとはしない。 その場を離れ、暫くしてようやく友人が重い口を開いて教えてくれた。 「あそこは、俗に『がき神社』と呼ばれている。以前あそこで男の人が亡くなっている。あれはその人が死ぬ間際に書き殴ったもの…」 という事だった。それ以上は何も話してはくれなかった。
平成13年(2001)のある日、曖昧な記憶をたよりに再びあの場所を探してこの町を訪れたが、長い歳月の彼方に押し流されたのだろう、町並みも変り、今となってはその場所さえ定かではない… |