広峰山 付 ケンケン婆

山頂の遥拝所 兵庫県姫路市の北方、屏風のように連なる山脈の中の一つに広峰山がある。
標高は310メートルとそう高くは無いが、山上には牛頭天王(素盞嗚命)を主神とする広峯神社がある。当社は京都八坂神社の元宮としても名高い。
展望台も設けられていることから、普段は観光客や神社への参拝者、ハイカーが訪れるこの山。
しかし、聖域といえども、いや聖域なれば尚のことか、夜ともなればこの世とはまた違った世界の住人たちがこの山に姿を現すという。

山頂に向う道での話である…
ある時、この山を走る道路の側壁に自動車が激突、運転手は即死だった。それ以来、その側壁には事故で亡くなった人の顔が浮き出てくるという話があった。しかし、私がその話を聞いた時には、余りに噂が広まり過ぎたせいで既にこの側壁は取り壊されて新しい側壁に変えられたという事だった。

山の中腹にはかつて路線バスの廃車が置かれていた。廃屋の傍に置かれたそのバスは一部では「(広峰山の)幽霊バス」とか「バス屋敷」、「バスの家」と呼ばれ、心霊スポットとして有名だった。
誰が一体どのような目的でこの場所にバスを持ってきたのか明確な情報は得られないままだが、聞いた話では、ここで事故を起こしたバスがそのままここに運ばれたという話、この廃屋の住人であった老人が孫の遊び場として廃車となったバスを置いたという話などがある。しかし、実際のところは、田舎などで見かける物置や農作業具の倉庫として使われていたのではないかと思われる。
残念なことに、このバスはかなり以前に撤去され現在は無い。

そして、山頂へと向かう。
その昔、いつの頃のことか定かではないのだが、この山の頂上である一組のカップルが世を儚み心中した。この世で結ばれないのなら天国で結ばれようと願い命を絶ったのだ。以来、浮ばれない二人の霊は今もここを彷徨っているという。
この二人の幽霊なのか否かは定かではないが、広峰山には昔から深夜2時に行くと幽霊が見えるいう話や、広峰神社の木に女性の幽霊が現れるといった話がある。
広峰神社の裏側に穴があり、そこも心霊スポットだという話を聞いたが生憎詳細は分からなかった。
広峰神社には「九つの穴」という珍しい参拝の方法がある。神社の本殿裏の壁に「九星」にちなんだ九つの小さなのぞき穴のような穴があり、この穴から三回小声で神様に願い事をすれば神様が聞き届けてくれるという。
神社の裏側にある穴ということで、私自身は勝手に洞窟の様なものを想像していたが、あるいはこの「九つの穴」の事をいっているのかもしれない。
そうだとしたら、心霊スポットならぬ「神霊スポット」と言うべきだろう。
そして、もう一つ。深夜、この山の頂上を訪れると、まるでケンケンをするように一本足で跳ねながら、両手に持った草刈り鎌を振り回して襲い掛かってくる「ケンケン婆」なる妖怪(?)が現れるという。
カップルの幽霊はいざ知らず、ケンケン婆までくると、もはや口裂け女やターボ婆等の所謂“都市伝説”の域に思えてくる。
広峰山の廃屋 他にも、この広峰山には廃屋などもあり、神域をこの様に表現することは憚られるが、地元では心霊スポットとして有名な様である。
この廃屋は神社参道の途中、遥拝所へ向う石段の中程にある。
かなり古い木造建築の家屋で、建っている場所から考えて恐らくは参拝者のためのお茶屋か何かであったのではないかと思われる。中の広間のような所の奥には仏壇とおぼしき物も見受けられた。
この廃屋も肝試しのスポットとして有名のようだが、私の知る限りでは、特に因縁めいた話は聞かなかった。
老朽化が激しいので決して中には入らないようにお断りしておく。
また、廃屋ではないが神社境内には社家(注.1)(御師屋敷)跡等も残されている。

余談になるが、この広峰山近くのドライブウェイのパーキングエリアでは、昭和44年(1969)12月14日、大映(大日本映画製作株式会社、角川映画の前身)の契約女優、毛利郁子(36)が愛人関係にあった水田照正さん(40)と子供の養育をめぐってトラブルとなり、包丁で水田さんを殺害するという事件があった。
現役女優の殺人は日本ではこれが初めてであったため、人々に大きな衝撃を与えた。

注.1 一定の神社に世襲的に仕える神職の家柄。広峰神社の社家は最盛期には七十五家あったと伝え、彼らは祈祷のほか参詣者の案内や世話を行い、広く中国、近畿地方を廻り御札や暦、薬を売るなどして神社を支えていたと伝える。






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