兵庫県加西市に幽霊の出る廃墟となったホテルがあると聞き現地を訪れたとき、北条鉄道北条町駅に関する不思議な話を聞くことができた。
静かな町の中に溶け込むように佇む木造の駅舎。この駅舎は播州鉄道時代の大正4年(1915)2月に完成、以後、国鉄を経て現在は北条鉄道(第三セクター)が管理運営をしている。 駅舎に入ると、そこは駅舎が出来た頃のままに時間が止まっているかのような、静かでどこか懐かしい気分にさせられる。改札の前に小さな券売所と待合スペースがある。 そこに、ここの名所「五百羅漢」のセピア色になった写真と五百羅漢をモデルにしたこの街のポスターがある。 話によると、夜にこの駅舎の五百羅漢の絵を見ると、眼が開いたり、笑ったりする事があるのだという。 (学校の怪談にありがちな「音楽室のべートーベンの肖像画」を思い出した) 五百羅漢の絵ということで、噂の主はおそらくこのポスターのことと思われる。 ポスターの中央に大きく描かれた羅漢さんの顔は、穏やかに微笑んでいるようにさえ見える。 しかし、夜に一人で鄙びた駅舎で人待ちをしていて、何気なく見上げたポスターの羅漢さんはともすれば不気味にも見えたのだろう。
話は変わるが、長年の風雨に耐え人々に親しまれたこの駅舎も、今年(平成13年(2001))の秋には駅前再開発に伴い、新駅舎の完成と共に解体されることになっている。 |