伊川谷の落武者

地元では有名な心霊スポット「ヒロコバ」の話が出た時に、伊川谷(神戸市西区伊川谷町)にも落武者の幽霊が出る(らしい)という話を聞いた。
古戦場や古城址、戦死者を葬った場所や首塚のあるような場所では落武者の幽霊が出るという話を聞く事がある。
伊川谷にもその様な場所があったかと記憶を辿ってみるが、にわかには思い当たる場所は出て来なかった。伊川谷のどの辺りの事かと尋ねてみたが、話してくれた方も噂程度に聞いた話ということでそれ以上の詳しい事は知らないということだった。

永井谷(同町井吹)には平家の落人伝説が残っている。
伊川の支流沿いに拓けた細長い谷間に永井谷集落がある。明治の初め頃までは長井村(あるいは永井村)と呼ばれ、かつては柿渋やタバコ栽培が盛んに行なわれていた。江戸の頃には「永井谷とは隠れの里よ、人の気もよい暮しよい」と謳われ、源平の合戦に敗れた平家の落武者が隠れ棲んでいたという伝説が残っている。
戦に敗れ落ち延びて行く途中、命を落とした者が伊川谷にもいたのかも知れない。
伊川谷にある太山寺(同町前開)は平家の尊敬厚く、平家納経(紙本墨書妙法蓮華経 32巻)が伝わり、地誌『播磨鑑』によれば、寿永年間(1182~85)、平氏が没落すると平教盛(清盛の弟)の末子(忠快?)が出家し太山寺の密蔵院に隠遁していたという話もある。伊川谷と平家は密接な関係があったことが伺われる。
参考までに書くと、伊川谷周辺には伊川城(高畑城)、太山寺城、脇村構居、小寺城、池上城などの城館があった。天正年間(1573~1592)の三木合戦で落城した城館もあったかもしれないが、何れも築城、廃城の時期等は詳らかでなく、落城にまつわる話などは伝わっていないようである。




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