古民家

古民家
ある田舎の住宅地の奥まった所、時の流れから取り残されたような一軒の古民家がある。
古めの住宅地図を見ても「古民家」としか書かれておらず、それ以上の事は何も分からなかった。
人が住まなくなってかなりの年月が経っているのだろう、茅葺屋根を覆っているトタンは赤茶色に錆び、正面には家財道具とも粗大ごみともつかないものが積み上げられている。

この古民家に関する奇妙な噂を聞いたのは何年前のことだっただろうか。
随分と昔の事らしい。古民家から少し離れた所、住宅街の中に隠れるようにしてひっそりと「埋め墓」(注.1)があり、墓地の方から火の玉?人魂?がフワフワと飛んできてこの古民家に吸い込まれるように消えて行ったのを見た人があったという。
墓地は住宅地が出来る以前からあった古い集落の人達の墓地との事で、恐らくはこの古民家の主もここに眠っているのでは無いだろうか。

注.1 遺体を埋める埋葬地。埋め墓(埋葬地)とは別に墓参のための墓地(=詣り墓)があり、これを「両墓制」という。主に近畿地方に多く見受けられる日本の墓制習俗の一つ。火葬が主流となった近年では既になくなったと考えられる。






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