神山池

神山池池畔に立つ「田楽の舞像」
国道372号線を社(加東市)から丹波へ向かって走ると、上鴨川を過ぎ、峠へと続く登り坂を曲がると左側に神山池(こやまいけ)が見えてくる。鴨川の始まりとなる部分に小さな橋があり、その傍らに石造観音立像が立っている。観音像の花立には「南無阿弥陀仏」の文字が刻まれている。ここで水難事故でもあったのだろうか。

いつの頃からそのような噂が流れだしたのかも分からなければ、先ほどの観音立像と関係があるのかも分からないが、この池には女性の幽霊が現れるという。

観音立像から200メートルほど北に進んだ所に小さな休憩所と「社町上鴨川」と刻まれた石碑があり、木陰に隠れるように二体の像が立っている。一体は立ち姿、一体は立膝の姿勢で大きな岩の上に据えられている。
台石には「田楽の舞 T.Sugawa 作 平成5年3月 兵庫県」と刻まれた石板と共に、「田楽の舞 この舞踊は、上鴨川地区において、五穀豊穣と無病息災を祈願して鎌倉時代に始まり現代まで、地元農家の長男が参加する形で代々受け継がれてきたものである。 (昭和52年5月17日 重要無形民俗文化財指定)」と記された説明板が埋め込まれている。

まず目を引くのは、この二体の像の頭部ではないだろうか。乱暴な表現だが、ホイップクリームを頭から被ったというか… 若い方にはピンと来ないかも知れないが、丁度、東宝映画の「マタンゴ」(1963)を想像して頂くと分かりやすいのではないだろうか。
貴重な伝統芸能を伝える像であることは百も承知なのだが、やはり見た目のインパクトはなかなかの物である。ネットでは「不気味」、「少年漫画の敵キャラになりそう」、「一瞬妖怪なのかなと思ってしまった」といった声も見受けられた。
神山池池畔に立つ「田楽の舞像」 像の頭頂部は丸く皿のように開いており、池の側にあることもあってか、人によっては河童の像だと思っている人もいるようだった。私も、以前、神山池の側に河童の像があると聞いた事があった。
この像は、毎年10月上旬に上鴨川住吉神社で行われる「神事舞」(国指定重要無形民俗文化財)の演目の一つ「田楽」を模したもので、平成5年(1993)、兵庫県によって設置されたようである。
田楽では、踊手は栗皮色の千早(ちはや)(注.1)を着て、御幣の紙垂(しで)(注.2)の束を結びつけた兀僧(がっそう)(注.3)を頭に被り、笛と大太鼓に合わせて、締太鼓やびんざさら(注.4)、鼓やチョボ(銅鈸(どうばつ))を持った踊手が跳躍しながら踊るというものである。
二人の像が被っているのはこの紙垂で出来た兀僧なのだが、紙垂の束を銅像で表現するのは難しかったことは想像に難くない。

参考データ
国コード282280002
兵庫県ID********
築造年代不明
型  式均一型 / 不明
天 端 幅3m
堤  高6.5m
堤 頂 長78m
総貯水量57000m3
満水面積0.1ha
(参考:『兵庫県「ため池の保全等に関する条例」』、『兵庫県「ため池データベース」』、「全国農業用ため池マップ」)

注.1 日本において古くから神事の際に用いられた衣装。
注.2 注連縄(しめなわ)や玉串、祓串、御幣などにつけて垂らす、特殊な断ち方をして折った紙である。
注.3 兀僧頭の略で、男の髪形のひとつ。【1】月代(さかやき)を剃らないで、全体の髪をのばし頭上で束ねたもの。また、その髪をした者。坊主、医者、老人などが主にした。【2】束ねないで全体の髪をのばして、垂れ下げた髪形もいう。ここでは【2】の髪形を紙垂で作った冠を指している。
注.4 数十枚の短冊型の板を紐で綴り合わせ、両端の取っ手を持って動かして、板を打ち鳴らして音を発する楽器。



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