猫屋敷 (神戸市)

兵庫県神戸市の舞子の海岸そばに「猫屋敷」と呼ばれる有名な廃屋があった。
平成7年(1995)の阪神・淡路大震災後に解体され、長い間壁だけが残っていた。

猫屋敷と呼ばれた大きな廃屋は、明石海峡海を隔てて淡路島を一望する絶景の地に建てられた別荘だったという。
それは、この地に有栖川宮熾仁親王の別邸や中国人実業家、呉錦堂の別荘があったことからも伺えるだろう。
その大きさはかなりのものであったらしく、昭和63~64年(1988~1989)頃の様子を知る人によれば、高い塀に囲まれ、庭には15メータープールがあったという。
しかし、この頃にはすでに廃墟となってかなりの年月が経っていたらしく、老朽化が進み、床は腐り踏み抜きそうになるほどの荒れようだったという。
風聞ではこの屋敷の中には無数の猫の死骸があったことから猫屋敷と呼ばれるようになったのだという。
二階には試験管やビーカーがあり、黒板には遺書が認められていたというがどこまで本当の話なのかは判らない。

廃屋独特の空気も然ることながら、一歩中に足を踏み入れると異様な空気が漂っていたと当時を知る人は話してくれた。
室内には様々なごみが散乱していたらしく、ホームレスの方が住んでいたり、不良の溜まり場になっていたのかも知れない。
この屋敷に足を踏み入れた者には何かしら不幸が起るらしく、ある人はケガをしたり、またある人は原因不明の高熱にみまわれたという。

丁度、猫屋敷の道を挟んだ向かいに神社があり、その神社はこの地(猫屋敷)に憑いた悪霊を鎮めるために建立されたとも言われている。
しかし、この神社は江戸時代に当地の北にあるT村(当時)より分神され建立されたものなので、猫屋敷が建った時代よりはるか以前からこの地に鎮座している。
もっとも、猫屋敷という建物とは関係なく、この土地に何らの因縁があり、その霊を鎮める為に建立されたと言われればそれも一理あるのかも知れないが…

その後の調査の結果、前述した「(猫屋敷)に憑いた悪霊を鎮めるために建立された」といわれる神社は、神社ではなく地蔵尊であることが判明。
さらに、この地蔵尊も、文政8年(1825)、山田村(当時)の庄屋らが船の往来安全と村の安泰を願って建立したものであり、この地の悪霊を鎮める云々といった話とはまったく関係のないことが判明した。

後日、猫屋敷があったと思われる場所を訪れてみると、綺麗な新築の分譲住宅が建てられていた。

余談になるが、何かの参考まで。
猫屋敷について調べていた時、ここから1キロほど離れた所にも猫屋敷と呼ばれる廃屋があることを教えてもらった。
そこは、廃屋にホームレスの方が住み着いていて、猫に餌付けしていたことから数多くの猫がいたため猫屋敷と呼ばれるようになったという話で、とくに因縁めいた話や怪現象が起こるという話は無いらしい。
そこにあった猫屋敷は解体され、現在は公園になっているいうことだった。


2017/04/18 加筆再編集。



2021/05/13 追記
平成18年(2006)夏頃に残存部分を解体撤去、同23年(2011)跡地にマンションが完成。






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