貞子池
(上ノ池)

貞子池
釣り好きの友人に誘われ釣りに出かけた時の事だった。
釣果が思わしくないと次の場所へと移動する、そんな風に何度か移動しているうちに彼らが「貞子池」と呼んでいる池に連れて行ってもらった。
そこは神戸市のほとんど北端、周囲は人家もまばらな所にあるやや大きな野池だった。護岸は綺麗に整備されており、航空写真で見ると変形五角形をしている。
貞子池という呼び名は彼らが勝手にそう呼んでいるだけであって、正式な名前はわからない。もっとも、名前さえあるのか否か定かでは無い様な寂しい所にある池である。

山裾に位置し、傍らには共同墓地があるという周囲の雰囲気から、映画などで一躍有名になった『リング』に登場する“貞子”でも出てきそうだと言う理由から冗談半分に「貞子池」と呼ぶようになったらしい。
ともすれば見落としてしまいそうな車一台が辛うじて通れるかというような細い道を通り、墓地の駐車場に車を停める。
墓地の横を通り池へと向かう。金網(フェンス)に覆われたその池は、一見どこにでもあるような野池なのだが、何か非常に嫌な空気を感じた。
それはオーバーに聞こえるかも知れないが、墓地の存在や先入観とは明らかに違う、人の本能の部分でしか感じる事の出来ない肌寒い嫌な空気なのだ。
これまでに様々な心霊スポットと呼ばれる所を訪れた私だが、こんなにも嫌な空気を感じたのは「有○の廃屋」(公開中止)とここだけである。
(2020/04/14 追記 : 令和元年9月、「火災現場」でこれらを遥かに凌ぐ恐怖を感じることとなる…)
理由は解らない、ただ何となく「ここに居たくない。ここには近寄ってはいけない。」と強く感じるのだ。
しかし、来てすぐに帰ろうとも居えず、しばらく友人と一緒に釣り糸を垂れていた。勿論、心の中では釣りどころではない。
何度となく竿を振っていて、ふと対岸に目をやると何か草むらの中に工事用の足場に用いるような仮設の階段のようなものと手すりが見えた。
目を凝らして良く見ると、その階段の先には池を見下ろすように小さな白い祠が祀られている。
「やはりここは何かある。」その小祠を見て私はそう確信した。
その小祠が何をお祀りしているのかまでは現在のところ分らない。弁財天(元来は水神、農業神)を祀ったものなのか、もしかするとその池で亡くなった人の慰霊のために建立されたものなのかも知れない。
しかし、嫌な空気の原因はこの小祠とはあまり関係なさそうな気がする。
つまりは池全体から何か嫌な“気”が発生してるようなのだ。

後日、別の友人から聞いた話では、祠の由来は分らないが、あの祠の辺りからよく蛇が出てくると聞いた。偶然なのだろうが奇しくも蛇は弁財天のお使いであると言われている。

参考データ
国コード281000258
兵庫県ID********
築造年代不明
型  式ゾーン型(傾斜遮水ゾーン型) / 谷池
天 端 幅4m
堤  高5.5m
堤 頂 長186.5m
総貯水量13000m3
満水面積0.575ha
(参考:『兵庫県「ため池データベース」』、「全国農業用ため池マップ」)


2020/04/14 追記
K様より「貞子池」の名前の由来についてご教示戴いたのでここに追記する。
K様によると、以前この池で釣りをしていた人がルアーに絡み付いた女性のものと思われる真っ黒な長い髪の塊を釣り上げたことから、この名前(貞子池)が付いたということである。


2022/12/20 追記
池の正式な名前は「上ノ池(かみのいけ)」と判明。小池の上手(北)、或いは集落の上手(北)にある池ということから、この名前が付けられたのではないか思われる。
併せて参考データを追記する。



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