すべり台

今から何十年も前の話。
私が幼少期を過ごしたある町での事。
住宅街の中に小さな公園があった。そこには、どこの公園にもあるような、すべり台、ブランコ、鉄棒、砂場などがあった。
公園の一角に2基のすべり台があったのだが、子供たちはどれだけ混んでいても決して(上る階段側から見て)左側のすべり台はすべろうとしないのだ。
知ってか知らずかたまにこの左側のすべり台をすべる子供がいると、他の子供たちはその子を避けてしまう程だった。

それにはこんな話があったからだった。
いつの頃か、この左側のすべり台の一番上の所の柵で女の人が首を吊って死んだというのだ。
真偽の程は定かではないし所詮は子供の噂なのかもしれないのだが、決して気持ちのいい話ではない。その話をきいて、(たとえそれがただの噂であったとしても)幼心にはひどく気味が悪く、他の子供達がそうするように私も左側のすべり台には決して近寄らなかった。

その公園も数年前に宅地整備で造成され、今は高層住宅の建ち並ぶ町に様変わりしている。



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