樋之池公園の手っちゃん

樋之池のそばの公衆トイレ
西宮七園と呼ばれる高級住宅街のひとつ苦楽園の西方に樋之池公園がある。
16464㎡(約4980坪)の公園内には体育館、テニスコート、市民プールがあり、公園の東半分には公園の名前にもなっている樋之池がある。
『涼宮ハルヒの憂鬱』や『長門有希ちゃんの消失』に、ここ樋之池公園が登場しており、ファンには聖地巡礼の対象となっている。

刺すような夏の日差しの中、人々の歓声に包まれる市民プール。8月下旬、夏休みが終わる頃(プールの供用期間が終わる頃)の夕暮れ、物陰から子供に手招きされることがあるという。
この話には幾つかのパターンがあるが、概ね次の様な話である。

プールで泳いでいる(遊んでいる)とプールサイドから手だけしか見えない子供が「おいで、おいで」と手招きをしている。
「何だろう?」と思い手招きされた方に行ってみるがそこには誰もいない。
不思議に思いつつも、帰る時間となりシャワーを浴びていると、シャワーの陰から再び先ほどの子供らしき手が手招きをしてくるが、確かめに行くとそこには誰もいない。
更衣室で着替えていると、またしても物陰から子供の手が手招きをしてくる。確かめに行っても誰もいない。
今度はプールの出口の方から手招きをしている。
奇妙に思いつつも、手招きされるままにプールを出て行くと、右手の木の陰から手招きをしている。
どうやって移動しているのか、手だけしか見えない子供が自分の前へ前へと現れては何処かへ誘うように手招きを続ける。
そのままついて行くと、樋之池の前にある公衆トイレの入口から手招きをしている。
公衆トイレに入ると…… 個室のドアが一斉に開いて無数の子供の手が襲って来たという。
これが樋之池公園に出る「手っちゃん」と呼ばれる手だけの幽霊だという。

その昔、夏休みにここのプールに行く途中交通事故で亡くなった男の子がいたという。
歩いてプールに行く途中事故に遭ったとも、家族でプールに行くために車に乗っていて事故に遭ったともいう。事故で男の子も酷い損傷を受けたようで、男の子の手だけが見付からなかった。
事故で亡くなった時期になると、その男の子の手だけが今もこのプールの周辺に現れるのだという。

現在のように公園として整備される以前この辺りは一面の野原の寂しい場所で、樋之池は釣り堀に利用されていたという。
詳しい事は分からないが、その頃、この辺りで子供が行方不明になる事があったらしく、或いはこの時の子供の霊が彷徨っているのかも知れない。

樋之池そばの公衆トイレの中には自殺防止の相談ダイヤルのステッカーが貼られている。(後述の事件以前から貼られている。)

樋之池 手だけの幽霊あるいはお化け(後述のバカボンに登場するのは人間?)の話は、古くは『今昔物語』巻二十七第三話「桃園の柱の穴から幼児の手が出てきて人を呼ぶ話」というものがあり、西宮の左大臣(源高明)の屋敷の寝殿の東北の母屋の柱に、木に節穴が開いていて。夜になると、その木の節穴から小さい子どもの手が指し出てきて、人を招くことがあったと記されている。

チャールズ・アダムスによる『アダムス・ファミリー』(The Addams Family,1937~)には、「ハンド」(ハンドは映画日本語版での名前、オリジナルドラマの日本語吹替版では「ロミオ」、英語版ではシング(The Thing))というゴメズ・アダムス(アダムス家の家長)の幼馴染で人間の右手だけの姿の幽霊が登場する。

『別冊少年マガジン』74年11月号に掲載された赤塚不二夫氏の「天才バカボン」の「30年目の初顔合わせなのだ」(後に、アニメ「元祖天才バカボン」の141話「ショートギャグでコニャニャチワ5」の一つとして「かわった友だち」のタイトルでアニメ化されている)では、バカボンのパパの30年来の友人として常に手だけしか見たことのない友人とその家族(妻と小学生の息子)が登場する。
その手だけしか見た事の無い友人とその家族の正体を確かめようと、あろうことかバカボンのパパは友人宅に放火する。炎に包まれた家から助けを求める友人家族に対し、家から出ることを促したが、結果家は全焼、一家は焼死してしまう。
翌日の新聞には火災現場から焼死体が発見されず、三つの手の骨だけが遺されていたというニュースが報じられる。

昭和50年(1975)より『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)に連載された古谷三敏氏の漫画に『手っちゃん』がある。
一家で潮干狩りへ行ったキヨシが手だけのおばけ「手っちゃん」と遭遇。必死で振りほどいて帰ったものの手っちゃんは一家の車にしがみついて家まで付いてきてしまう。紆余曲折を経てやがて手っちゃんはキヨシ一家の家族同然の存在となる。

以下余談。
近傍のマンションで高齢者の孤独死(平成28年(2016)頃?)、父親が息子を殺して自らも命を絶つという事件(年月日不明)も起こっている。
令和元年(2019)6月13日、付近の市道で、歩道を歩いていた保育園児と職員の列に高齢女性の運転する車が突っ込むという事故があった。この事故で、6歳の女児が肩甲骨を折る重傷、5歳の女児が軽傷を負った。
令和4年(2022)12月18日、公園の公衆トイレで市内の女性が亡くなっているのが発見された。



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