兵庫県の山間部にある小さな集落、宇原。
静かな山村の風情を漂わせるこの集落には、ここには似つかわしくない幾つかの奇怪な話がある。
集落には、女性の幽霊や片足の無い犬の霊が現れるという話がある。
集落の中を通る兵庫県道80号宍粟香寺線には小さな峠(宇原坂)があり、峠の頂上には地蔵尊が祀られている。
この地蔵尊は文政13年(1830)に出羽国(現在の秋田県及び山形県)の友之助ほか七人の発願のもと、この集落の人々の力添えを得て三界萬霊を祈念して建立されたものという。
地蔵尊の見守るこの小さな峠には夜になると女性の幽霊が現れることがある、また車で通ると車内に居るはずのない子供の泣き声がすることがあると聞いた。
集落の北を通る道では無理心中した親子の霊が成仏できないままに今も彷徨っているという。
この小さな峠に現れる幽霊はこの成仏できない親子なのだろうか。