平成14年(2002)7月8日。
あれ以来音沙汰の無いまま1ヶ月と2週間が過ぎようとしたある日、犬神騒動は急展開を迎える。
結局、Aさんがあまりに「犬神落とし」の祈祷に連れて行ってくれと願うので、ご家族が取敢えず祈祷をしてもらえば本人の気が済むのであればという事になった。
しかし、ここで一つ問題が生じた。
K寺に連れて行ってもらう(=犬神落としの祈祷をしてもらう)事を訴えていたAさんだが、ご家族が連れて行くことを躊躇っている間にK寺のご住職が亡くなり、代替わりしてからは犬神落としの祈祷はもうやっていないと言ってしまっていた手前、K寺に連れて行く事は出来ないのである。
そこで、他に犬神落としの祈祷を行っているお寺は無いかと探した所、県内の真言宗のあるお寺(仮に、O寺と呼ぶ)がその祈祷を行っているという事を確認した。
しかし、O寺の住職は気難しい方らしく、お願いしたからといって簡単に祈祷をして貰えるというものでもないという話だった。そこで、困ったご家族は幸い親戚の方がO寺の檀家であったことから、その親戚の方を通じてO寺の住職にお願いして祈祷をしてもらうに事となった。
本来ならばAさん本人が祈祷を受けて然りなのだが、O寺は峻険な山岳にあり、高齢に加え入院中のAさんを連れて行くには余りにも体力的に不安があるということから、代参ということでご家族がO寺にて祈祷を受ける事になった。
その犬神落としの祈祷とは、短い経文をただ淡々と繰り返し唱えつづけるというものだったそうだ。
約1時間程の祈祷の後、ご家族はO寺を後にし、その足でAさんの入院する病院へと向った。そこでご家族が見たものは…
そのままの例えだが、そこには憑き物が落ちたように晴れ晴れとしたAさんがいた。
ご家族が祈祷を受けてきた事をAさんに話すと、不思議な一致があった。
その不思議な一致とは、O寺にてご家族が祈祷を受けていた頃、時を同じくしてそれまで度々苦しめられていた頭痛や眼の痛みがAさんからスーッと消えていったというのだ。果たして、偶然の一致だったのだろうか。
以来、Aさんは以前のような頭痛や眼の痛み等は全く起らなくなったという。
「犬神」が呪法によって取り除かれたのか、それとも精神的なもの(プラシーボ、或いはプラセボ(Placebo)効果)だったのか。
その答えは誰にも解らない…
2018/12/22 一部訂正。
本文中に登場する二つの寺院の仮称が共に「K寺」と表記され混同しやすいので、仮に「K寺」と「O寺」に表記を改める。