奇妙な噂
~名古屋駅金時計前~

【説明】
名古屋駅(地元の方は「名駅」(めいえき)という)の定番の待ち合わせスポットとして知られる「金時計」。名古屋駅中央コンコースの桜通口にあり、太閤口にある「銀時計」とともに名古屋駅の二大待ち合わせスポットになっている。
かつてコンコースには金、銀の2本の柱があった。昭和35年(1960)4月16日、当時大混雑した待ち合わせスポット「大時計下」に代わる新たな待ち合わせスポットとして、名古屋駅中央コンコースの2本の柱にそれぞれ金、銀の装飾を施し、「大時計下」の混雑解消を図ったことにはじまる。
昭和55年(1980)、金の柱、銀の柱はコンコースの改修により姿を消す。
昭和63年(1988)4月1日、JR東海の設立1周年を記念して新幹線改札に近い太閤口に「銀時計」(SEIKO製)を設置。
平成14年(2002)12月20日、JRセントラルタワーズの完成3周年を記念してジェイアールセントラルビルが金時計(CITIZEN製)を設置した。 土日ともなれば大勢の人が集まり、人が多すぎて待ち合わせ相手が見つけられないと言われるほどになっている。

多くの人々が行き交うこの金時計前にまつわ奇妙な噂を聞いた。
平成28年(2016)の7月頃(?)、多くの人が集まる白昼の金時計前で通り魔事件が発生。辺りは血の海となり、駆け付けた警察官らで辺りは騒然となった。
この時に命を落とした被害者の霊が今も金時計前で佇んでいる……というのだ。

お気付きになられた方もおられるのではないだろうか。
この噂の奇妙なところは「幽霊が出る」という部分ではない。
そもそも、名古屋駅の金時計前で「通り魔事件」など起こっていないのだ。
平成26年(2014)2月23日に、名古屋駅近くにある交差点で、名古屋市内に住む無職の男(30)が車で無差別に歩行者をはねて13人にけがを負わせるという事件があったが、年代も場所も異なる。

実際には起こっていない事件なのだから、いくら探してみたところでそんな話が出て来るはずもない。
ところが、ひとつ気になるものをネットの書き込みに見つけた。
2021年1月1日2時47分にYahoo!知恵袋に投稿された質問を下記に引用する。

知恵袋ユーザーさん
2021/1/1 2:47

2014年8月以前に、名古屋駅の金時計前で殺人事件ありましたか?
調べても2016に通り魔事件があったことしかわからないんですよね。

とある小説に、名古屋駅の金時計前で「数年前ここで殺人事件が…」というセリフがあり、それが発売されたのは2014年8月なんですけど。
実在する店名や商品名がたくさん出てくるので、その事件も現実にあったことなのか?と調べてみたけどよくわからず。

ご存知の方いたら教えてください。

引用元:Yahoo!知恵袋. https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14236589394


ここでは、知恵袋ユーザー(以下 質問者)が、ある小説に出て来る「2014年8月以前に名古屋駅の金時計前で起こった殺人事件」が実際に起こった事件なのか、フィクションなのかを質問している。
この質問に対して、あるユーザーが

長年タワーズに勤務していますがそのような事件は聞いていませんね。
金時計自体もそこまで古くはないものですが・・・。

引用元:同 上


と回答されている。
私が調べた限りでも、2014年から2016年頃に金時計前で事件があったという事実は確認出来なかった。
さきほどの質問者は、その質問の中で「調べても2016(年)に通り魔事件があったことしかわからないんですよね。」と書いている。
存在しないはずの「2016年に起きた名古屋駅の金時計前で起こった通り魔事件」が恰も実際起こっていた事件の様に一部の人々の記憶として存在していると思われる……
金時計前は非常に人通りが多いため、何らかの作品で「事件の起点」として使われた可能性は否めない。
小説やテレビドラマなどで2016年に金時計前でそういった事件の描写があり、それがいつしか本当にあった事件(事実)として人々の記憶に刷り込まれていったのだろうか。

実際、モキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)などが事実と誤認される事例はいくつかある。有名な所では映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)、日本国内で言えばフジテレビ系で放送された『放送禁止』シリーズなどが上げられる。
平成14年(2002)頃、神戸の五色塚古墳の付近で頭部を粘着テープでグルグル巻きにされた死体が発見されたという噂が一部であったが、これは『墓に登る死体』(浅黄斑 著)という小説の話が実際にあった事件と誤認、流布された例である。

実際には起こっていない事件が、恰も誰かがその光景を見ていたかのように人々の記憶に共有され、人口に膾炙される。
幽霊の噂もあるいはこの様な物なのかもしれない。

※おことわり
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