津山盆地北部を東西に走る作州街道(岡山県道339号西一宮中北上線、津山広域農道)が津山市の北部を抜け山間の一宮に入って行くと、すぐに一宮隧道(心霊の噂あり)が見えてくる。トンネルを抜け、木々の間を縫うように進んで行くと、進行方向右側に草木に埋もれた二軒の民家が見えてくる。民家と言っても家までの道は雑草に埋もれ、一部の窓は割れ、到底人が住んでいるとは思えない様相を呈している。道路に面した二軒のさらに奥に、もう二軒同じような廃屋が存在している。
噂では、この四軒のうちの一軒で一家心中(首吊り)があったという。それ以来、周囲の家でも怪奇現象が起こる様になり、遂には誰も住まなくなったという。
窓ガラスが割られていたり、内部には落書きがされていたりと荒らされてはいるが、廃墟、廃屋特有の「かつてそこで人が生活していた痕跡」という物は全く感じられず、新築のまま誰も住むことなく廃屋となった感じがするという話を聞いた。この話が事実なら、これから書くある噂を裏付けるひとつの証拠にもなるのではないかと思う。
夜にこの家のそばを通ると、誰も住んでいないはずの廃屋に明かりが点いていて、中で人影が動いていることがあるという。どの程度の明かり(部屋全体が明るく光る程度の室内照明なのか、懐中電灯やロウソクの明かりのようなぼんやりとした明かり)なのか定かではないので一概には言えないが、明かりと人影についてはホームレスが住み付いているのだという話もある。
後述するが家に電線が引き込まれている形跡がないため、部屋全体が明るく光っていたとしたら怪奇現象と言われるのも無理からぬことなのかもしれない。
更に、昼間でもこの家の前を通ると家から誰かに見られているような視線を感じるという人が一定数いるともいう。
市街地から外れた山の中に不自然に建つ四軒の家。ガスはプロパンガス、下水道は簡易水洗や浄化槽としても、前の道路(作州街道)沿いには電線が通っているが、住宅へ電線が引き込まれている様子はない。上水道も通じていないと聞いている。公共交通機関に関していえば周辺に鉄道の駅はなく、路線バスのバス停も見当たらず、車がないと生活は困難と思われるような場所である。本当にこのような状況で人が住んでいたのだろうかという疑問が湧いて来る。
実は、ここには一家心中の噂以上に奇妙な噂がある。
これから書く話は公的な記録や新聞記事等では確認出来ていない話であり、真偽のほどはもとより、風聞を繋ぎ合わせたような話なので、内容に矛盾や不整合があるかも知れないが、聞いたり調べたりして得た情報を私なりにまとめてみることにする。
正確な年代は詳らかではないが、恐らくは1990年代前半、バブル崩壊の前後の頃の事と思われる。
どのような絡繰りがあるのかは分からないが、反社会的勢力と企業舎弟の関係にあったSなる人物を中心とした数名が住宅金融公庫(現 住宅金融支援機構)より不正に資金の融資を受けるために建てたのがあの四軒の住宅だという。
しかし住宅の完成を目前にして不正が発覚、詐欺を計画したS以下数名が逮捕された。その後どの様な経緯があったのかは定かではないが、詐欺目的で建設された住宅は一度も誰も住むことなくそのまま放置され、現在に至っているというのが真相らしい。
詐欺被害に遭ったのは住宅金融公庫ではなく、農協(農業協同組合)であったといった話や、上水道がここまで引けなかったために完成目前で建築が放棄されたといった話もある。
私個人の推測に過ぎないが、電気、水道に関しては、そもそもの目的が居住ではなく詐欺目的で建てた住宅だったとしたら、電気や上水道は最初からどうでもよかったのではないだろうか。そう考えると、このような不便な土地に建てたのも納得がいく。
ここは廃墟や廃屋にありがちな、後から一家惨殺や一家心中の噂が付会された一例と思われる。一家心中云々は最初からなかったと思って間違いないだろう。
廃墟となって以降、ホームレスが住んでいた、女性が連れ込まれてレ○プされる事件があった、改装・改修を行い坪単価1万円で売りに出されたこともあったが、全く買い手がつかなかった。といった真偽不明の話もある。
※おことわり
(1) 本記事の内容は“ミステリースポット”の紹介として掲載をしているものであり、特定の地域、人物、組織(企業、団体、機関等)、住宅等の名誉棄損、誹謗中傷、揶揄等ならびに業務の妨害等を目的としたものではないことをご承知おきください。
(2) 可能な限り事実確認、検証をしておりますが、情報源は風聞によるところも多く、とりわけ「怪談」や「不思議な話」といった類の物としてお読みいただければと存じます。
(3) 一切の名称、所在地及びそれらに類する情報、及び画像等については公開できことないことをご承知おきください。