令和3年(2021)10月某日。所用で日本海側にある京都府M市を訪れた。
あと数十分で日付が変わるという時間になっていたが、少し寄り道をすることにした。
以前、M市に“あまり知られていないが非常に怖ろしい心霊スポット”があると聞いていたからだ。
場所はM市の幹線道沿いに広がる住宅街。大体の場所は教えてもらっていたのだが、私に教えてくれた方も人から聞いた話ということで詳細な場所や具体的な特徴までは分からないということだった。
深夜の住宅街をスマホの地図とカーナビを頼りに一巡してみるがそれらしい場所は見当たらない。
幹線道沿いということもありそれなりに交通量がある、車のエンジン音は周囲の音に掻き消されるため住民の方々のご迷惑になるほどではないと勝手な言い訳をしつつも、深夜の住宅街を他府県ナンバーの車が何かを探す様に徐行しているのだから下手をすれば不審車両がいるということで通報されかねない。
早々に切り上げて帰路につく。
最後に、今回見付けることが出来なかった“あまり知られていないが非常に怖ろしい心霊スポット”について書いておこう。
そこは住宅街の一角にある空き家。そこで過去に何かあったのか、或いは土地に何か曰くがあるのかさえ詳らかではないが、周辺では心霊スポットとして知られているということだった。
いつ頃の事かさえ分からないが、ある日数人の若者が肝試しに侵入した。一通り中をウロウロと見て回った後、
「特に何もなかった(起こらなかった)なw」
などと言いながら、停めていた車に戻ろうとしたのだが一人いないことに気付く。
まだ中を散策しているのか、それともどこかに隠れていて驚かそうとしているんじゃないかなどと言いながら探してみるが一向に見付からない。
若者たちは不安になり大声で呼んでみたりもしたそうだが、返事は無かった。言い知れぬ恐怖感に突然見舞われ、若者たちは行方不明の友達を置いてその日は帰ってしまった。
次の日、家に帰っているだろうと連絡をしてみるが返信は無い。
数日後、肝試しに入った空き家で行方不明になっていた若者が発見された。
発見された時、若者は体中の関節と言う関節が逆に曲げられ、叫ぶように大きく口を開け、白目を剥いて息絶えていたという。
同じ話なのか別の話なのか分からないが、ここにはもうひとつ同じような話がある。
これも先ほどの話と同じように肝試しに入った若者が行方不明になり、数日後に発見されたという話だが、この若者は血塗れで壁に向かって座ったまま、壁に顔を埋めるようにして息絶えていたという。
自ら狂ったように壁に顔面を叩きつけ続けたらしく、身元が分からないほどにその顔はグチャグチャになっていたという。
勿論、その家を見付けたとしても入らなかったが、今にして思えば見付けられない方が幸せという事もあるのかも知れない……