い○な○邸
(い○な○さん家、地蔵屋敷、猫屋敷 (注.1)

い○○み邸
心霊スポットと一口に言っても、全国的に有名な心霊スポットもあれば、地元の人の間でしか知られていない様なスポットもある。寧ろどちらかというとそういったマイナー(と言えば語弊があるかも知れないが)なスポットの方が多いのではないだろうか。

そこでふと思うことは、それらが実際の事件や事故の舞台である場合、よほど大きな事件や事故の場合か、メディア等が面白がって心霊スポットにして取り上げでもしない限り、敢えて誰もその話を広めようとはしないと思う。故にその地域でしか知られないスポットというものが多数存在するのだと思う。
また、理由は色々と考えられるが、ひとつには殺人や自殺、心中の事実があったからと言ってそこが必ずしも心霊スポットになるとは限らない(それを言えば日本中が心霊スポットになる…)、ふたつめに、不幸な出来事のあった場所を心霊スポットと呼ぶことが不謹慎であるということなどが考えられると思う。

とは言え、心霊スポットと聞いて私が訪れない訳が無い。自分でもどうしたものかと思うが。

場所は工業都市として有名なA市の川沿いにある廃屋。
地元では肝試しスポットとして有名らしく、若者の不法侵入がよくあるという。
通称「い○な○邸」。かつて住まれていた方の表札がそのまま残っていることからいつしかこう呼ばれる様になった。この苗字には二通りの名読み方があり、「い○な○」は誤読であり、正しくは(こちらの住人だった方は)「い○は」であるというが、真偽のほどは定かではない。
また、玄関前に地蔵尊が祀られていることから、地蔵屋敷と呼ばれることもある。

話によると、いつの頃か定かではないが、一家惨殺があったとか、一家心中があったとか、ここに住まれていたご夫婦のどちらかが病気が原因で亡くなり、残されたご家族も後を追うように自殺されたという話が残っている。また、そんな事件事故の話はただの噂で、実際は夜逃げであったという話もある。
地元では有名な所らしいのだが、生憎、具体的にどのような怪現象があるのかについては詳しい情報は得られなかった。
ただ、関係が有るのかないのかは解らないが、次のような話を聞いた。
平成23年(2011)頃、肝試しにここを訪れた高校生グループの一人が、その直後に市内の川で溺死するという事があったらしい。
また、焼失(後述)後の「い○な○邸」を携帯で撮ったところ、子供の幽霊が写っていたという話を聞いた。

実際に訪れてみると、そこはある種独特の雰囲気に包まれていた。
まず玄関脇に地蔵尊が祀られており、東隣には人工の物と思われるそこそこ大きな池があった。
見た感じ地蔵尊はそんなに古いものでは無さそうだ。
家を建てるより以前からここにあったのか、この家の方の供養のためか、或いはこの池で誰か亡くなったのか、様々な憶測が脳裏を過るが詳しいことは分からなかった。

次に、霊的な何かというよりは、立地条件の悪さが酷く印象的だった。
まず、玄関は南向きなのだが、玄関の前を国道が高架状に走っており、この高架が玄関を覆う巨大な庇(ひさし)の様になっているために昼でも薄暗い。
高架のすぐ西側は大きな川になっているため、家の正面左隣は高いコンクリートの壁(国道の橋脚)で行き止まりになっており、加えて雨が当たらないことから砂埃が吹き溜まっている。
更に、家のすぐ西側は(先にも書いたが)川とその土手の上を走る幹線道になっているため、道路の路面から見ると谷底に家がある様な位置関係にある。そして、東側は前述の池に張り出す様に建っている。
おまけに裏の家も廃屋である。

玄関は破壊され、入り口には管理会社の張った「立入禁止」の張り紙が風雨に晒されボロボロになっていた。
肝試しの若者達の侵入が多い(多かった?)のだろう。
家の中は家財道具などが当時のまま放置され、香典袋が散乱しているといった話もあるが、法を犯してまで入りたいとは思わなかったし、それ以上に、良く分からないが廃屋が持っている独特の雰囲気とは違った何か言葉では言い表せない嫌な空気が漂っていたので侵入はしなかった。
ただ玄関の穴から中を覗くと埃を被ったダンボール箱が幾つか積み上げられていた。

外野がとやかく口出し出来る話では無い事、失礼な事を言って事を承知の上で敢えて私個人の所感を述べさせて戴くと、国道と幹線道の交差点、屋根が道路の路面より低い、池が隣接している、玄関の前は日の当たらない吹き溜まり。これでは住まれていた方には申し訳ないが、排気ガス、粉塵、湿気などの物理的要因と相俟って、立地条件の悪さも精神衛生的に悪影響を及ぼしていたのではないかと思われる。
これらの環境がこの様な結果(病死或いは心中)を齎したのか否かについては知る由も無く、語る資格も無いが、霊的な意味でなくとも正直何か独特なものを感じる廃屋であることは間違いない。

平成23年(2011)12月26日、火災により隣接する猫屋敷とともに焼失。玄関前に有った地蔵尊は整備され、地元の有志によって大切にされている。

注.1 「猫屋敷」とも呼ばれているが、近傍に「猫屋敷」と呼ばれる廃屋が他にもあり、其々に猫屋敷と呼ばれているのか両者が混同されているのか定かではない。
[誤記訂正] 猫屋敷とは、この「い○な○邸」に隣接する廃屋で、こちらにも奇妙な噂が有る。
それについては、いずれまた日を改めて書こうと思う。



2017/04/18 加筆再編集。


2018/03/28 追記
2018年3月11日。まる様よりい○な○邸の近況について次のような情報をお寄せ戴いた。
(掲示板より抜粋)

「い〇〇邸」のあった場所を覗いて来ました。
建物のあった土地は建設資材置き場になってました。
こんなに狭かったかな?といった印象。
お堂と隣にあった池は今もありましたよ。



2020/05/09 追記
一部では火事で家が全焼、一家三人が焼死したという話もあるが、これは平成23年(2011)の火災のことと思われる。
遡って確認できる範囲では平成21年(2009)の時点で廃屋であったことが確認されており、この時点で既に地元では心霊スポットと呼ばれていた。






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