姫路市と龍野市(現 たつの市)の市境に槻坂(けやきざか)という峠がある。
この峠のある場所は古くは「槻折山」(つきおれやま)という名で呼ばれていた。『播磨国風土記』によると、品太天皇(応神天皇)がこの山で狩りをした時のこと。天皇が一匹の猪を槻の矢で射たところ、その矢が折れたことから「槻折山」と名付けられたと言われている。
姫路市太市にあった邑智駅家(おおいちのうまや)と龍野市小犬丸にあった布勢駅家(ふせのうまや)を結ぶ箇所にあることから、古来、京都から九州の太宰府を結ぶ山陽道(西国街道)が通っていた場所とも考えられている。槻坂には長さ約40メートル、高さ約7メートル、道幅5メートルほどもある大きな切通が残っている。
槻坂には南からJR姫新線の槻坂隧道、旧道の槻坂隧道(旧 槻坂トンネル)、兵庫県道5号姫路上郡線の槻坂トンネル(新 槻坂トンネル)、山陽自動車下り線の槻坂トンネル、山陽自動車上り線の槻坂トンネルの五つのトンネルが通っている。(以下、旧道の槻坂隧道を「旧トンネル」、県道5号姫路上郡線の槻坂トンネルを「新トンネル」と呼ぶ)
古くからの交通の要衝にある槻坂の周辺には幽霊の噂がいくつかある。
傍を走る姫新線にまだ蒸気機関車が走っていた頃(1936?~1971)、飛び込み自殺が何件かあったという。過去には旧トンネル付近の雑木林で数件の自殺もあったといい、真偽不明だが殺人事件があったという噂もある。
また、旧トンネル自体はほぼ直線なのだが、トンネル掘削の距離を稼ぐため、旧トンネルへ続く西側の道路は新トンネルの手前から大きくカーブして山裾に沿うように西側坑門の直前で大きくカーブしている。そのため見通しが悪く、加えて幅員が5メートルしかないためトンネル内での離合は困難(実質不可能)なことから事故も多かったと聞いている。
そういった様々な要因のせいだろうか、この場所は霊が集まる場所だと言う人もいて、地元では心霊スポットと
言われ、旧トンネルで起こると言われる不気味な話を幾つか耳にした。
トンネル内を走行中、カーステレオやバイクの調子が突然悪くなったという話にはじまり、トンネルに入ったとたん頭痛がしたがトンネルを抜けると何事も無かったように頭痛が治まった、人魂を見た、叫び声が聞こえた、ぼんやりとした白い人影のようなものを見た、深夜12時を回ると坑門(出入口)に白い服の女性の幽霊が現れる、トンネルの壁から幽霊がぬっと現れた、頭から血を流した男を見た、血塗れの真っ白なワンピースの女が物凄い速さで追いかけてきた、ボンネットに無数の人の手形が付いていたなど様々な噂がここにはある。
旧トンネルの話ではないが、JR姫新線の最終電車がこの辺りを通過する時に、自殺者の幽霊が乗って来るという話も聞いた。
このトンネルより古い旧トンネルが存在するという噂もあるが、おそらくは現在(※探訪当時)新トンネルの工事中なので、それに対してこのトンネルを旧トンネルと言っているものと思われる。現在(※ 探訪当時)、平成17年(2005)度の完成を目指して新トンネルが工事中である。
この槻坂隧道も近年新トンネルが出来ると共に旧トンネルとなることから、更に奇怪な噂が囁かれることであろう。
平成17年(2005)8月の新トンネル竣工後も旧トンネルは暫くの間供用されていたが、現在はコンクリート製の壁で封鎖されている。また、トンネルへと続く旧道もフェンスで通行止めとなっている。
参考データ |
路線名 | 旧 兵庫県道5号 姫路上郡線 |
延 長 | 198.0m |
幅 員 | 5.0m |
高 さ | 4.5m |
竣 工 | 昭和29年(1954) |
2025/06/11 加筆再編集