姫路市と龍野市(現 たつの市)の境に古びた小さなトンネルがある。
これが槻坂(けやきざか)隧道である。
槻坂(峠)の歴史は古く、『播磨風土記』に「槻折山」(つきおれやま)という名で見受けられる。
品太天皇(応神天皇)がこの山で狩りをした時、一匹の猪を槻の矢で射たところ、その矢が折れたことから名付けられたと言われている。
また、姫路市太市にあった邑智駅家(おおいちのうまや)と龍野市小犬丸にあった布勢駅家(ふせのうまや)を結ぶ箇所にあることから、古来、京都から九州の太宰府を結ぶ山陽道(西国街道)が通っていた場所とも考えられている。
そんな古くからの交通の要衝にあるこの槻坂では幽霊の話が絶えない。
傍を走る姫新線がまだ機関車だった頃、飛び込み自殺が何件かあったといい、またトンネル付近の雑木林などでは何件かの自殺もあったという。
それ故かこの場所は霊の集まる場所だと言う人もいて、このトンネルでの恐怖体験をいくつか耳にした。
トンネル内を走行中、カーステレオやバイクが突然調子が悪くなったという話にはじまり、トンネルに入ったとたん頭痛がしたがトンネルを抜けると何事も無かったように頭痛が治まった、ぼんやりとした白い人影のようなものを見た、頭から血を流した男を見た、血塗れの真っ白なワンピースの女が物凄い速さで追いかけてきた、など奇怪な噂には事欠かない。
槻坂隧道にはこのトンネルより古い旧トンネルが存在するという噂もあるが、おそらくは現在(※ 掲載当時)新トンネルの工事中なので、それに対してこのトンネルを旧トンネルと言っているものと思われる。現在、平成17年(2005)度の完成を目指して新トンネルが工事中である。
この槻坂隧道も近年新トンネルが出来ると共に旧トンネルとなることから、更に奇怪な噂が囁かれることであろう。
参考データ |
路線名 | 旧 兵庫県道5号 姫路上郡線 |
延 長 | 198.0m |
幅 員 | 5.0m |
高 さ | 4.5m |
竣 工 | 昭和29年(1954) |