城跡の花束
-招き寄せられたのかも知れない話(2)-



投稿者 : Black Velvet


「車輪の下 -招き寄せられたのかも知れない話(1)-という話を書いた時に、以前にも同じ様な事があったことを思い出した。

今から20数年前(1990年代中頃~後半頃)のことだったと思う。
今にして思えば何故そんな時間にそんな場所に行ったのかと思わないことも無いが、その頃は時間と元気だけは有り余っていたので、毎週末、用も無いのに友人と集まっては深夜まで車に乗って遊びに出ていたのだった。
時間についてはあまり覚えていないのだが、21時とか22時頃だったと思う。当時加古川市に住んでいた友人の運転で志方(加古川市志方町)の城山に連れていてもらったことがあった。
詳述は割愛するが、ここは南北朝期に播磨国の有力国人赤松氏によって築かれた中道子山城(ちゅうどうしさんじょう)があった場所である。
もう随分と昔の事なので曖昧なのだが、当時は城山のそこそこ上の方まで車で行けたように記憶している。現在は登城入口そばに駐車場があり、そこから先に舗装された道があるがステンレス製のポールが立てられていてそこから先は車両進入禁止となっている。

真っ暗な中ヘッドライトだけを頼りに山道を進んでゆく。
道が行き止まりになった所は少し広くなっていた。車を停めて友人と車内で夜景を見ながら他愛も無い話をしていた。
そうこうしているうちに尿意を覚えた私は友人にその旨を伝え、外に出てすぐ傍の木の根元で用を足した。

ふと足元に目を遣ると、供えて間もないと思われる花束が月明りに照らされ浮かび上がる。
驚きのあまり息を呑む。人間あまりに驚くと声も出ない。
それが何なのかは直ぐに分かった。
数日前?数週間前?にこの城山で母子の無理心中があったと地方紙の片隅に小さく載っていたことを思い出した。ただ、詳しい場所は書かれておらず(書く必要もないのだが)新聞には城山とだけ書かれていたように思う。
まさか自分が何気無く、それも小用を足すために行った場所にそんな悲しい事実があったとは。
私は心の中で自身の非を詫び、静かに手を合わせて故人のご冥福を祈った。

あれから20数年を経て経験した不思議な体験(「車輪の下 -呼び寄せられたのかも知れない話(1)-)に対して、Twitterのフォロワーのほしみ様から頂いた「心霊的には招き寄せられたとかいうことになるのでしょうか。」というリプライをまた思い出し、偶々であれそこを訪れた私に何かを伝えたかったのだろうかと思っている。






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