この話は、心霊スポットの紹介というよりは、少し不思議な話としてお読みいただきたい。
ある特定の場所、それもごくごく限られた方向(被写体)でのみカメラのシャッターが切れないということを2回ほど経験した。
これはそんな不思議な経験をした時の話。
令和7年(2025)5月のある日、数年来の探索のパートナーS氏と県中東部に赴いた後、時間があったので数年ぶりに「武家屋敷」
を訪れ(外から眺めただけで侵入はしていない、数名の先客がいた)、その後、南下して県南部へ移動。
山間に残されたバラック集落を訪ねた。
海を臨む高台にある古い集合住宅が建ち並ぶ一角、そこから更に谷に沿って奥へ奥へと進んで行くと、時の流れに取り残されたような光景が見えてくる。朽ち果て、蔦が絡まったバラック小屋が谷沿いに数件建ち並ぶ。詳細は不明だが、土木工事に従事されていた朝鮮人労働者の集落のようである。現在でも数件の家が住まわれている。
バラック集落を通る細い道が途切れた先、谷底のようになった水路をさらに遡ると、山肌に近い所の擁壁に暗闇がぽっかりと口を開けている。そこから絶え間なく水が流れている。
地中に溜まった余分な水分を逃がして地盤の緩みを防ぐための排水路、或いは降雨時の放水路と思われる。
興味本位で中に入ってみる。内部はコンクリートが吹き付けられているが、手掘りなのか凹凸が目立つ。場所柄、大型の重機は入れそうもない。
わずかに底を伝う水を避けるようにして進んで行く。トンネルの向こうには外の日差しが見えている。
少し入った所で内部の様子を写真に収めようとシャッターを切るが全く反応しない。
撮影する場所(方向)を少し変えてみたり、出口の明るい方にピントを合わせてみたり、明かりの無い所に向けてみたり、設定を変えてみても、全くシャッターが切れない。
不思議なこともあるものだとS氏に話すと、「たまたまでしょ(笑)」と軽く笑われてしまった。
いつも言っていることだが、何もかもを「心霊現象」というつもりはない。寧ろそういったものに対しては懐疑的なスタンスでいる。
特定の場所でカメラのシャッターが切れないという事象は、主に極端に暗い場所や白一色などといったコントラストのない場所でカメラのオートフォーカス機能や露出計が正常に作動せず、シャッターが切れないことがある。(測距輝度範囲外、測光輝度範囲外)
また、今回の例には当てはまらないが、被写体に接近しすぎて、設定された「最短撮影距離」を超えてもピントが合わずシャッターを切ることが出来ないという事が起こる可能性がある。
ただ、これまで様々な状況で撮影してきた中で、シャッターが切れないということはほとんど起こったことがない。
加えて、周辺は有名な古戦場で、敗軍の死者だけで千余人といわれるほどの激戦地であった。
オカルト的に付会すれば、無念の最期を遂げた兵(つわもの)達が眠る場所に、私達がみだりに足を踏み入れたことを疎んじたのかも知れないなどと考えてしまう。
初めて見るこの景色を収めたい、そうそう来れる場所でもないし、そんな気持ちに加え、撮れないとなれば尚更意地になってしいま、幾度となく試行錯誤を重ねようやく撮ったのがこの1枚である。
※ 「体験談」に収録するべき話だが、古戦場という背景もあるので敢えて「心霊スポット」に分類した。