石燈篭

空き地に建つ石燈篭
兵庫県加西市に在る「水正池」という池の傍らに老婆の幽霊が現れるという話を聞き現地に向かっていた時のことだった。
兵庫県道23号三木宍粟線を北上し小野市粟生町に入る。県道沿いには葡萄畑が一面に広がり、即売所が道路脇に点在するという長閑な風景が続く。
やがてバス停を過ぎて少し行くと比較的最近のものと思われる住宅地と住宅分譲地が進行方向左手に見えてくる。
何処にでもあるような不動産会社の「分譲中」と書かれたのぼり旗や「管理地」、「売物件」といった看板が立つ更地のなかのひとつに周囲の風景とはあまりにも不釣合いな光景が飛び込んできた。
更地の真ん中に立つ黒い石塔のようなものが遠目にもはっきりと見える。
突然のことだったので一度はその前を通り過ぎたものの、そのあまりに異様な光景が気になった私は車をUターンさせてそこに戻る。

住宅分譲用の更地と思われるそれは県道から一段高くなった場所にあり、いくらか雑草が生える中、赤茶けた土が顔をのぞかせている。
その更地の中ほど、金網に囲まれた(というより包まれたという表現の方が的確かもしれない)一基の石燈篭が建っている。しかも、その石燈篭は火をかけられ真っ黒に焼け無残な姿を晒している。
燈篭の周囲の僅かな範囲の地面しか焼けておらず、野焼きのあおりで焼けたとは思えない。意図的にこの燈篭を焼こうとして火をかけたということがありありとうかがえた。
石造りの燈篭が燃えるはずもなく、この燃え方から察するに、周囲に何か燃えるものを置いて一緒に燃やしたか、或いはガソリンか灯油の類でもかけて火を点けたようにしか思えないような燃え方である。
一体誰が何の目的で…
以前誰かの家が建っていたのを更地にしたとしても、わざわざ石燈篭だけを残すものだろうか?
しかも、なぜこのように燃やされているのか。
予定があった私は残念ながら手掛かりも答えも得られぬままに目的地「水正池」を目指してここを後にした。

余談になるが、鳥山石燕の『画図百器徒然袋』(がとひゃっきつれづれぶくろ、天明4年(1784))に「古籠火」(ころうび、ころうか)というものがある。これは、灯のともされなくなった古い燈篭に霊が宿り物の怪となったもので、時折、日が暮れると自然に灯がともったという。
そんな話を思い出させる不思議な光景だった。

現在、引き続き経緯等を調査中である。
何かご存知の方がおられたらご教示戴きたい。


2003/08/04 追記
『平成十五年度版 関西怨念地図』(平成15年、G・H・M研究所 著、コア・アソシエイツ 刊)に、当所が「謎の土地」として紹介された。


2022/08/10 追記
当地にお寺あるいはそれに類するものが建っていたという話があるが、詳しい事は分からない。






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