さて、私たちの方ですが、やはり霊障を免れることは出来ませんでした。
翌日の晩、榎本君から連絡がありました。次の様な内容です。
あの後、バイト先へ行くと、、、、師匠が彼の顔を見るなり、、
「どこ行ってきたの!」
ときつい口調で言った。そして、彼を本堂へ連れて行くと、、
「祓うから、そこへ座って。
自分の背後は見えにくいものだからなぁ。」
といって、除霊をしてくれた。
浮遊霊がついてくることはよくあるが、普通は寺に居るうちに自然に落ちてしまう。
わざわざ祓ってくれるのは、めずらしいことである。
その後、、、
「かなり危ないことに関わってるね。
やめなさい、、。」
と言うので、預っていた写真をみせ、知っていることを話した。
師匠の鑑定の結果は、、、
「お地蔵さまが、抜魂をしないまま捨てられ、埋っている。
その下には水脈があり、お地蔵さまは泥にまみれている。
その結果、この土地には仏罰がくだっており、その後、性質が逆転して怨霊の住み家と化した。
また、惨殺された者がおり、その殺傷因縁が凄じい。
意識を飛ばしただけで、その怨霊が斬りかかってくる。
ある部屋にお札が貼ってあるが、まったく効果なし。
命懸けで対峙すれば、怨霊はなんとかなるかもしれないが、仏罰の方は手の施しようがない。
ここに関わるのは命を捨てる様なものである。
自分なら、頼まれても絶対に拒否する。
出てきたもの、憑いてきたものを祓ったり、追い返したりすること、即ち、除霊は可能だが、浄霊は難しい。
ましてや土地の浄化などとんでもないことである。
そっとしておくしかない。障らぬ神に祟りなし。
一日も早く手を引かないと、命にかかわる。
日本で有数の祈祷師であっても、現状では無理だろう。
そこ一帯を穿くり返して、整地する覚悟があれば、可能性が見えなくもないが、、、それにしても、わざわざ命をかけて浄化するメリットが見当たらない。
それに、この土地がそのようになってしまったそもそもの原因は、日本史以前にまで遡る。もちろんそれを調べる必要性はない。
この様なスポットは所々に存在するので、気をつけよ。
しかしながら、この様な土地に引き摺り込まれたのには、やはり、何等かの因縁がある。
部外者にとっては、考えようによってはいい経験だが、当事者つまり住人にとっては、死への誘いである。
因縁を自覚しないと、またどこかで引き寄せられるであろう。
引っ越しの際には、すべての家具に荒塩をふり、出来るだけ早期に、除霊の祈祷を受けなさい。」
というものである。
死人がでない内に、手を切ったほうがよい。
榎本君は、この他にも、自分の考えなどを教えてくれました。
この内容は茅野君にも伝えました。そして、もう行くのはよそう、、、
という話になったのですが、、、実際には、問題が持ち上がり、1週間後、もう一度だけ足を運ぶことになります。
それはさておき、、、しばらくは、悪影響が続きました。
私の自宅で最も頻繁だったのは、弟の部屋です。
誰も居ないはずなのに、人の気配がする。ぼそぼそと話し声が聞こえたこともあります。何等かの関連がある浮遊霊のようでした。
電灯をつけたり、「帰れ」と念じたりするとすぐに消えました。週に1、2度そんなことがありました。
また、私が行(読経)をしていると、背後に気配がする、、、。しかも鳥肌が立つような気配がする、、ということが数回ありました。
これは「本体」(親玉)でなく、付属霊(手下)のようです。気合いを入れて行を続けるとその内に消えました。
お帰り願っただけで、決して浄化しようとしたわけではありません。この様な付属霊だけなら、なんとかなるのですが、手を出すと芋蔓式に出てきますから、いずれ「本体」と接触しかねません。浄化などとんでもないことです。
悪影響は茅野君にも及びました。
彼が仕事から帰って、うとうとしていると、自分が畳の上に座っている感じがしたそうです。いやーーな感じだと思った時、周りの様子が見えてきました。
どうも馬場君が語った夢の中に出てくる、あの座敷のようです。
茅野君は、少女が現れ、やがて恐ろしい母親が出てくることを予想しました。
ところが、、、、その気配はありません。これは夢だから覚めなくては、、
しばらく、そう考えているうち、、、。
ついに、、、座敷の奥の方から、近付いてくる足音が聞こえてきました。
般若面の母親か、、、。彼は筆舌し難い恐怖感を覚えたそうです。
しかし、、、。
現れたのは母親ではありませんでした。
「・・・・!」
この時点で、茅野君は「それ」が「本体」であることを知りませんでした。でも彼は見てしまったのです。「それ」を、、、。
それは「それ」はだんだん近付いてきました。
彼は恐ろしさのあまり、
「神よ仏よ、、、、、
、、、、、、、、、お爺ちゃん!」
と助けを請いました。
「うわっ・・・・!」
危機一髪、祈りは通じたようです。彼はなんとか夢から覚めることができました。
茅野君はすぐに私に連絡をくれました。
聞いてみると、、。
彼が話す、特に「本体」の描写は、私が想像していたものよりリアルでした。
(その描写については、記述を控えます。ご容赦ください>ALL)
私が、、、
「「それ」が「本体」だよ。」
と伝えると、彼は、、
「げ! 例の斬りかかってくるヤツ? マジかよ~。」
と、しばらく絶句してしまいました。
でも有難いことに、彼がこの夢を見たのはこれっきりです。
私の見解と茅野君の描写を合せると、、、、。
オソロシイ、、、今でも、思いだしたくないくらいです。
(実は、、私自身が書くのを嫌がっているのです、、、m(_ _;)m )
悪影響は、身体にも現れました。
私自身では、妙に肩が重い、指先が痺れる、などの症状がでました。もちろん、透き通った「お客さん」がその原因です。
普段なら、弾き飛ばすし、乗ってきても振り落してしまうのですが、仕事帰りに電車で居眠をしていたり、疲れてうとうとしている時を狙ってくるので、つい背負ってしまいました。
このタイプは浮遊霊ばかりなので、落とすのは簡単、、、とは言っても、落とすまでは、吐き気を伴った肩こりに悩まされます。
この肩こりがもとで、体調を崩してしまうと、ヤツらの思う壷ですから、健康管理には妙に神経質になってしまいました。
また、めったに遭わない金縛りにも、その当時だけは続けて2、3度見舞われました。
弟の大輔には、昔痛めた腰の傷みが復活しました。10年以上前の症状の再発です。
彼には元々ある因縁があり、その影響で腰痛を患ったのですが、ヤツらはそこにつけこんできました。
弱点をつつき回すのは、ヤツらの常套手段です。
腰が痛いと言う大輔をうつ伏せに寝かせ、腰を診ると、そこだけが吸熱されていました。
「お客さん」を祓い落とし、気の通りを促すと、傷みが消える。数日するとまた痛みだすので、自宅へ戻って、私に気の流通を修復させる。
つまり、しばらくは痛んだり直ったりの繰り返しでした。
これは、皆があの土地と縁を切るまで続きました。
しかしながら彼は、そのことをきっかけにして、自分の弱点と因縁をはっきり認識したようです。
それ以来、彼はたいへん謙虚なものの考え方をするようになりました。
さて、茅野君ですが、、、。
怖い思いをしたわりには、影響が最も軽かったようです。軽い肩こりと鼻づまりで済みました。
彼には強い守護の力が働いているためです。