で、、最後のお呼出、、、。
馬場君宅へ2回目に行った1週間後のことです。私の自宅へ茅野君が寄っている時に、大輔が榎本君を連れて帰宅しました。
当然、榎本君を囲んだ、「お化け屋敷からの撤退」という臨時作戦会議になりました。
結論は、
「影響下から離脱したら、綺麗さっぱり縁を祓い落とす」ということです。
そして、もう関わらないぞ、、、と決心した時、、、電話が、、、鳴りました、、。
馬場君からの連絡でした。
「状況が悪化したのですぐに来てくれないか。
家の中の様子も不穏だし、バンドが分裂の危機にあるんだ。」
とのこと。
もちろん、断るつもりでしたが、、、馬場君の頼みは強く、、つまり、断り切れず、、、茅野君と私の二人で出かけることになりました。
大輔と榎本君は「何かの時」に備えて待機です。
出発に際し、榎本君が警告をしてくれました。
「あるものが見えてて、それはとても危険なものです。
しかし、見間違い、勘違いをしやすいものなので、何であるかを言う訳にはいきません。言うとかえって危険です。
知らないで行けば、おそらく見た瞬間にそれだと気付きます。
それは、動かない物体です。気をつけてください。
そうだ、よく効くお守りがあるから、貸してあげましょう。」
彼がいう物体が何であるかは、私にはわかりませんでした。
借りたお守りは茅野君が身につけ、私は水でシャワーを浴びて気を引き締め、夜9時ごろ、車で出発しました。
「こりゃぁ、あの土地に呼び寄せられてるな。おいで~~、おいで~~って、手で招いてるみたいだな。
たぶん馬場君も魅いられていて、俺たちを引き摺り込む手先になってるんだよ。
何が危ないかって、、、そりゃぁ最も用心が必要なのは、行き帰りの車の運転だな。簡単に体を切り刻むとしたら、交通事故がいちばん手っ取り早い、、、、。 」
そう話しながら、私は安全運転に集中しました。
助手席の茅野君も真顔です。ときどき助言をしたりして、彼自身もハンドルを握っているつもりで注意を払ってくれました。
馬場君宅に近付くにつれ、緊張感が高まりました。茅野君も同感のようです。
彼の言葉を借りると、
「敵陣深く乗込んで行く、、てぇのは、映画だとわくわくするんだが、、。
違うんだよなぁ。
背筋がぞくぞくするのは同じなんだが、緊張感がすごいね。
神経がバリバリに張りつめてる。
ずっと、鳥肌が立ちっぱなしだよ。」
といった感じでした。
そして、もう2・3分で到着、、、というところで、、、、通行止。工事中につき迂回せよ、、とのこと。
「ありゃぁ。よりにもよって、こういう時に工事しなくても、、、。」
茅野君は不平をいいましたが、こういう時にこそ、こういった障害が出てくるものなのです。
「コの字型の迂回路が書いてあるよ。注意して行こう。」
私は矢印のとおり、ハンドルを右に切りました。
順路に従って進むと、前方に交差点。迂回路を示した地図にあったとおり、左折。
その先をもう一度左折すれば、いずれ、もとの道と交差するはずです。
300mほど進むと、舗装が跡切れ、砂利道になりました。
「あれぇーー。やばいかな。」
私は警戒しました。
しかし、少し行くと、また舗装路に戻りました。
で、、、ほっとして前方を見ると、、、、、路肩に白い車が止っています。
嫌な感じがしたので、私はスピードを落とし徐行しました。
嫌な感じはさらに増しました。
「何か違うな、戻ろうか、、、。」
私がそう言うと、茅野君も同意しました。
道幅が狭いので、Uターン出来る場所を探すと、、、、。前方のその白い車の先は、少し広くなっているようです。
私はそのまま車をすすめ、白い車に4・5mの所まで近付きました。そして、ライトを上向きにして、、、車を照しだしました。廃車のようです。
フロントグラスが割れ、車体には蔦が絡んでいます。
そのとき、、、、背筋をぞーーっと冷たいものが走りました。
「これは!」
近付かない方が良いようです。私がブレーキを踏もうと思った瞬間、茅野君が、
「うわっ、ダメ! 止って! 戻ろっ!」
と叫びました。
茅野君も同じものを感じたようです。
「バックで戻るぞ!
そっちの路肩、見てて!」
私は、車を後退させ、そのまま砂利道を抜けました。
そして舗装路にもどると道幅も少し広がり、なんとかUターンすることが出来ました。
来た道を逆に戻ると、途中で別の迂回路を見つけました。未舗装なので、路地と勘違いし、さきほどは見逃していたようです。
道を確かめていると、通行止の方から、地元のものと思われる軽トラックがやってきました。そして、その道へ入って行きました。
「それ、ついて行くぞ。」
1分ほど、ついて走ると、元の道へぶつかり、まもなく馬場君宅が見えました。
着くと、まず、先ほどの道について、馬場君に尋ねました。図を書いて、例の廃車の位置を示すと、、
「あれ? その道、高速道路にブチ当たって行き止まり、のはずだよ。
高速の壁とか、見えなかった? おれは、行ったことないけど、、、
でもさぁ、その辺の道って、両脇が畑だったりするからな。路肩が崩れたりすると、、ハマルかもなぁ、、」
馬場君にはわからないようです。
するとバンドのメンバーの後藤君が口をはさみました。
「その廃車の先、、道、、ありました?俺、バイクでそこの道に入り込んだことがあるけど、、、廃車で行き止まり、、その先は薮になってたはずですよ。昼間だったから辺りもよく見えたし、、、、。
でも、へんだなぁ、その廃車のところのおよそ10mだけが舗装、、
いや、アスファルトでなくコンクリート敷きだったな、、、
あ、そうそう、、、近くに廃屋がありませんでした?
見るからに、お化け屋敷ってやつ、、、そうか、夜だと判らないか、、。
でも、確かに、嫌な感じの場所ですね。墓でもあるのかなぁ?」