糀屋ダム
(翠明湖)

翠明湖と翠大橋
北播磨の水瓶と呼ばれるダム湖、翠明湖(すいめいこ)は昭和40年(1965)より農林水産省の「国営加古川西部土地改良事業」の中核施設として建設が開始された糀屋(こうじや)ダムによって造られたダム湖で、24年という歳月をかけて平成元年(1989)に完成した。
面積87.3ha、貯水量1,350万t(令和4年9月16日時点での貯水量887.7万t、貯水率66.7%)。
蓄えられた水は、主に加古川西部土地改良区の3850haに年間約1,400万tの農業用水を、西脇市周辺の繊維産業向けに約1,120万tの工業用水を供給している。
(余談だが、希に糀谷ダム、椛屋ダム、糟屋ダム、麹屋ダム、かすやダム等の表記が見受けられるがこれらは誤記である。)

翠明湖のほぼ中央部には翠明湖を横断するように翠大橋(みどりおおはし)が架かっており、湖周には1周約12キロメートルの周遊道路が通っている。翠大橋たもとの翠公園(みどりこうえん)には「ポートピア ’81」のシンボルだった白いターミナルマストが移設されている。ここからダム湖を望むことが出来る。 春は桜、夏の木々の緑、秋は紅葉、冬の鴨の飛来など四季折々の情景を楽しむことが出来、周遊道路ではマラソン、サイクリング、ハイキングが楽しむことが出来る。以前はバス釣りの人が京阪神からも大勢来ていたようだが、現在は魚釣り、ボート遊び、キャンプ等は禁止となっており釣り人の姿は見られない。

北播磨の水瓶という機能的な側面以外に行楽地としても注目される糀屋ダム(翠明湖)ではあるが、これらが光とすれば、影という側面も持っている。
翠明湖の中央に架かる翠大橋のたもとには「悩みがあるときは相談を こころの健康相談ダイヤル 0570-XXX-XXX どうしようもなくつらいとき ひとりで悩まず電話してください」といった看板や、「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。 わたしがあなたがたを休ませてあげます。 聖書より 西脇キリスト教会 TEL 0795(XX)XXXX」といった看板が目に留まる。
これらの看板からも分かる様にここは自殺の名所という側面を持っており、兵庫県でも屈指の心霊スポットとも言われている。

全長340メートルの翠大橋のほぼ中央部に車の離合のために道幅が少し広くなっている所がある。ここが丁度ダム湖の真ん中に当たることから、ここから湖に身を投げる人が後を絶たない。
正確な人数は把握出来ていないが、ここでの自殺者の数は「年間数十人」という話もある。流石にその数字をそのまま鵜呑みにすることは出来ないが、ここで自殺者が出ていることは先ほどの看板が物語っている。
ここでの自殺の歴史は古いらしく、そもそもダム湖として運用される以前、翠大橋の上からまだ建設段階の水の無い谷底に飛び込んで自殺した人に端を発し、それ以降も自殺する人が多くいたという話がある。
翠大橋から湖底までは最高33メートル。水が無ければビルの7~10階相当の高さから飛び降りた事になる。
(確認したが、翠大橋が建設された年と翠明湖に水が入れられた年の前後関係が判然としなかったので、この話の真偽については不明な部分もあるかと思われる。)
最初にここで身を投げて亡くなった人の霊は今も成仏出来ずに彷徨っていると言われ、ダムの坂(ダム本体(堤体)の斜面のことと思われる)をゆっくりと下りてくる姿が見られるという。
また、ここで自殺が多発すると聞いて、谷底に打ち付けられて血塗れになった遺体や現場ばかりを狙って撮影していたカメラマンがいた。
そんなことを繰り返していたある日、カメラマンの家族が入院先の病院の屋上から身を投げて亡くなった。遺体は建設中の翠明湖の谷底で見たあの時の遺体の様に、地面に叩きつけられ朱に染まっていたという。
(自殺防止のため病院の屋上は基本立入禁止、またはフェンスで厳重に囲まれているのではという疑問は払拭出来ない…)
あまりに自殺が多発するので、(直接地面に激突するよりは水が有ったほうが僅かでも生存率が上がるとでもいうのだろうか)市の規則により如何なる時でもこのダム湖だけは常に水を湛えているという話も聞いたが、そもそもここの所管は近畿農政局であり、前述のように農業用水、工業用水の為の必要な貯水である。所在地も「多可郡多可町」であって「市」ではない。

翠大橋のたもとに設けられた自殺防止の看板 以前は自殺があると新聞の地域版等に小さく掲載されていたそうだが、余りにも自殺者が多いため自殺の助長を防ぐという理由から、ある時期を境に一切報道されなくなったという。
今でも地元の人は救急車やパトカーがサイレンを鳴らしてダムの方に向かうのを何度も見聞きしているという。
翠明湖が完成してからも自殺者は後を絶たないようで、湖底には未だに発見されていない遺体も沈んでいるといい、渇水などで水位が下がると、人骨や水没(転落)した車などがしばしば発見されるという。
毎年8月には地元警察による水中の捜索が行われるという話も聞いたが、真偽の程は不明である。

翠明湖への投身以外にも、翠大橋での首吊り自殺、周辺の山林での首吊り自殺等もあったという。
また、釣りに来ていて誤って落水した子供を助けようとした父親が溺死するという事故もあった。
この子供の安否は定かではないが、水辺には子供の幽霊がよく現れるという。
周辺では筍が採れるらしく、筍掘りに来ていた人が自転車に乗った人に声を掛けられたが、振り返ると誰もいなかったということもあったという。
平成14年(2002)6月には、姫路市のトラック運転手の男(55)と共犯の男(53)が、知人女性との交際を巡ってトラブルとなっていた男性(60)を殺害。糀屋ダム近傍の山中に遺体を遺棄するという事件もあった。

糀屋ダムと翠明湖、近傍にある旧 天神隧道の周辺には、今も成仏できない自殺者達の霊がここを彷徨っているという。
地元の人は気味悪がって昼間でも近付かない、霊感の強い人には昼間でもはっきりと幽霊の姿が見える、心霊写真が写った、夜に近付くと湖に引き摺り込まれるといった噂がある。

糀屋ダム(翠明湖)が兵庫でも危険な心霊スポットの一つと言われる理由は、幽霊を見たという話も然ることながら、霊に憑りつかれたという話が多いことも理由かと思われる。
自殺者の無念の思いが数多くとどまっている場所ゆえか、非常に強く危険な霊がいると言われ、幽霊を見やすい、波長が合いやすいといった霊感体質(?)の人や、肝試しに訪れた若者が霊に憑りつかれておかしくなった、除霊を受けたが霊障が治まらないといった話がいくつもあるようだ。

とりわけ多くの人が命を絶った翠大橋とその橋のたもとにある公園とトイレの付近では様々な怪奇現象が起こると言われている。
翠大橋の上にずぶ濡れの女性の幽霊、或いは髪の長い女性の幽霊が現れる。この橋の上から身を投げた女性が成仏出来ず彷徨っているのだという。
この女性の事か否かは定かではないが、あるカップルがこの橋の上から飛び降りようとした。しかし、怖気付いた男は結局飛び降りることが出来ず、女性だけが亡くなってしまうということがあったという。橋の上に現れる幽霊は無念の最期を遂げたこの女性なのかも知れない。
他にも、この橋では、
夜に翠大橋の中央辺りから下を覗くと無数の手が伸びてきて引き摺り込まれそうになる。
夜に翠大橋の中央辺りから下を覗くと、自分の顔の周りに大勢の人が一緒になって水面を覗き込んでいる姿が月明りに照らされた水面に映る。
車で翠大橋を渡っていると突然橋の中央まで来たところでエンジンが停止して動かなくなってしまう。
夜に翠大橋を渡っていると誰もいないはずなのに、橋の欄干(らんかん)を棒か何かで叩くような音が追い掛けてくる。
翠大橋のたもとに立つ西脇警察署が立てた自殺防止を呼び掛ける看板に描かれた子供が血の涙を流す。(この看板は確認できなかった)
といった話がある。

幽霊が出ると言われるトイレ 翠大橋のたもとにある翠公園と片隅にある公衆トイレにも幽霊が出るという話がある。
翠公園、或いは公園のトイレで死体遺棄事件があった、女性がトイレで子供を産み落として捨てた、といった話があるが、いずれも噂の域を出ない。死体遺棄に関しては前述の平成14年の事件が何らかの形で誤って伝わったのかも知れない。
ここのトイレには危険な霊がいて憑りつかれた人もいるという。

その他の怪奇現象としては、翠明湖の周遊道路を車で走行していると車内で「チリーン、チリーン」と鈴の音が鳴り響く。カーステレオの電源が突然切れたり入ったりする、音楽が途切れたりノイズが入る。車を停めて仮眠していると窓に無数の手形が付いていた。
これらに関しては、鈴の音以外は機械の誤作動、誰かの悪戯の可能性も否めず、一概に怪奇現象とは言い切れない部分もある。
ここで携帯電話で話していると、通話相手から
「騒々しいけど、誰か周りにいるの?」
と聞かれる。周囲に友人はいるが騒いではいない。そこで、
「友達は一緒にいるけれど騒いではいない」
と伝えると、(通話相手から)今も電話の後ろ(電話の向こう)で大勢の人が騒ぐような呻くような声がずっと聞こえていると言われたということもあたっという。
これも混線(混信)等の機械的な要因も考えられるので、一概に怪奇現象とは言い切れない部分もある。

現在、翠明湖は魚釣り禁止だが、かつては京阪神方面から多くの人がブラックバス釣りに訪れていた時期があった。その頃、不思議なことに、釣りをしていた人が突然原因不明の体調不良を訴え救急車で搬送されるといったことが何度となく起こっていたという。
これらの体調不良をすべて心霊現象と結び付けるのは疑問が残るところではあるが、タタリを恐れてここで釣りをする人が徐々にいなくなっていったという。

糀屋ダム、翠明湖で起こる数々の怪奇現象は、ここで自殺した人たちの浮かばれぬ思いが原因だと言われがちだが、その起源はもっと根深い所にあるという人もいる。
ダム建設工事中の事故で数名の作業員が瀕死の重傷を負った。しかし、工事の中断と賠償責任、企業のイメージダウンを恐れ、負傷した作業員を病院に搬送せずそのまま人柱として工事現場の地中深くに埋め、何事も無かったように工事を完成させた。人柱として闇に葬られた人々の無念の思いが次々と自殺者を招くのだという。
工事の遅延、労災事故の損害賠償等はあるだろうが、負傷者の手当てをせず、ましてや生き埋めにしたという事が発覚すればそれこそ施工者、場合によっては発注者に刑事、行政、民事の責任が問われ只事では済まされない。それを考えると荒唐無稽な話であることは明白であり、この話はよくある都市伝説の類であろう。

糀屋ダムの側に雑草に埋もれた一軒の廃屋がある。
かつてここは「大○寺」という宗教団体の施設であった。真偽の程は定かではないが、ここに住んでいた夫婦が自殺したという話があり、それ以後誰も住まなくなり、今は荒れ放題となっている。
この廃墟については、狡猾機動隊の2FI-XX 様(from Ruins)が詳細にレポートされていたが、残念ながら2019年3月31日のジオシティーズ閉鎖により現在は閲覧することが出来ない。

参考:
糀屋ダムでの不思議な体験 「糀屋ダム 1」
糀屋ダムでの不思議な体験 「糀屋ダム 2」



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